第28章 初雪は淑女と共に
黄昏時の空、深い闇と鮮やかなオレンジの間を長く飛べば目的の地に着く。
「レディ、ここが今日の最終目的地だ!」
ふふんと格好をつけつつ、フワリと空中で一回転をきめる。
わっと小さな叫びを支えるように強く抱きしめ、フッと笑ってみせればレディの瞳が強く輝いた。
「遊園地だ!」
ぱあっと灯りがともったように、レディの柔らかい頬が赤く染まる。
2つの色に染まる空の間、下を見れば宝石のように様々な乗り物が輝く。
「綺麗」
たった一言レディは呟き、瞳の中が遊園地の輝きでいっぱいになる。
「そうだろうとも!けれどレディ、君の美しさに比べれば...」
その先を言おうとしたが、何故だか言葉に詰まった。
腕の中にいるレディがあまりにもキラキラと輝いて見えたからだろうか。
視界が少し広くなったような気がして、ただ嬉しそうに笑顔を見せるレディがあまりにも愛らしくて。
この感情はどこからやってくるのだろうかと思うほど、抱き締める力が強くなる。
自然と上がる口角と、熱を帯びないはずの顔にかすかに熱が灯っていくようで心が震えた。
この気持ちをなんと例えるのだろう?
「カラちゃん?」
小首を傾げ俺を見上げる君。
大きな丸い瞳に俺をうつして笑う。
先程までの悲しげな顔をどこかへ置き去りにして、レディには笑っていて欲しい。
ただ、それだけを願うばかりで...。
「レディ」
小さな君を肩に乗せる。
左肩が少し重く、それなのに何故だろう。
こんなにも嬉しいのは。
ゆっくりと地面に足をつけ、そのまま遊園地へと歩きだす。
「カラちゃん?重くないの?」
「フッ、レディが重いわけがないだろう?さぁ、行こうか?」
「...」
黙り込むレディ、なんだ?何か悪いことを言ってしまったろうかと不思議に思っていれば震える声。
「このままは、ちょっと恥ずかしい」
「え?ああ、そうなのか?俺は全然恥ずかしくないんだが、レディがそういうなら降ろそう」
レディを抱き上げて、そっと降ろす。
少し名残惜しい気がするが、レディがそう言うなら仕方のない事だ。