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【おそ松さん】月下に咲くは六色の花

第27章 白無垢よりもウェディングドレスよりもタキシード!?



「トト子姫様、どうか、どうかお情けを...」

しわくちゃのその人は、懸命にトト子姫に手を伸ばす。

そしてカッと目をひらいたかと思うと、パタリと手をベットの下へとぶら下げた。

ただのモノになり果てたのだ。
ものいわぬ冷たい存在に...。

「どうして、人間って...」

その言葉の先を飲み込み、もう動かないであろう手をそっととり俯くトト子姫。

その先はまばゆい光に包まれ、私の手の中の梅は灰へと変わった。
お話の中でヴァンパイアが太陽光に照らされ、灰へと変わっていくそのもののように...。

灰は風にさらされ、なにもなかったように私の手の中から消えた。

「トト子姫、貴方は...」

微笑むトト子姫の姿になんて悲しそうに笑うのだろう、この人はと...。

ただ黙って私を見続けるこの人に、なんと言えばよいのか言葉はみつからない。

そして...。


いつか、私もこの梅の花が見せた幻影のようになるのかと思うと胸が痛くてたまらなかった。


この胸の痛みは、誰を思って私の中に広がっていくんだろう。

よぎる思考の先に見えたのは...。


「鈴音」ちゃん」

ほぼ同時に私を呼ぶ声がして、ふとそちらを向くと穴の空いた空間が真後ろにあった。

ぽかんと口を開けていると、無数の白い手がそこから伸びてきて私の四肢を掴む。

「え、えええっ!!?!」

そのままズルズルと不思議な空間へと引っ張りこまれる、それはまるで水の中に引きずり込まれるような感覚だ。
トト子姫の姿が離れていく。

反射的に手を伸ばした先に、トト子姫は笑顔で手を振っている。

梅の甘い香りが薄くなっていき、かわりに懐かしい香りと太陽の香り、そして甘いチェリーブロッサムの香り。
私を引っ張り込む主が誰なのかわかった瞬間、抵抗をやめ手を引っ込めた。

「さようなら、狐の姿をした...か弱い人間」


悲しげな瞳が私を見続ける。



「貴方はこうならないでね?」


トト子姫の周りに梅の花びらが舞踊る、その日私が最後にみたトト子姫の姿だった。
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