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【おそ松さん】月下に咲くは六色の花

第27章 白無垢よりもウェディングドレスよりもタキシード!?



「でも、お狐様って優しいのね」

あまりに予想外の言葉に面食らってしまう。
吹き抜ける風の甘い香りが、今は心底恐ろしい。

「ねぇ、お狐様?私達、人でないものは、人に好かれると思います?」

変わらない表情、甘い香りが体内に嫌でも入ってくれば身体が重くなる。

「それは...」

どう答えてよいものかと口ごもるが、実際人である私からすればずっと松坊ちゃん達と生活をしているわけだし嫌いな訳ではない。

むしろ...。

「好きになる事もあるのではないでしょうか?少なくとも私が人間であればきっと、そう思います」

じっとトト子姫を見つめそう言えば、トト子姫は心底びっくりしたような顔をした後に笑い出す。

「本当に、お狐様は夢みたいなことをおっしゃるんですね」

おかしいっと笑うトト子姫に、少し怒りを覚える。

「なぜ、笑うのですか?」

「お狐様だって私達と一緒にいるんですもの、知らないわけじゃないでしょ?もし本当にお狐様が言うようならきっと...きっと」

途端に悲しそうにするトト子姫。

「トト子もこんなふうにする事はないのかな。」

「こんなふう...?」

私がそう言った瞬間、ざあっと梅の木が一斉に揺れ始める。
花びらを一斉に散らして、それはまるで泣いているかのように...。

あまりにも美しい光景に目を奪われていると、梅が1輪手に落ちてきた。

ぼんやりと淡い優しい光を放ち、手の中に現れるトト子姫の姿は寂しそうで今の顔とかぶる。

花の中に映るトト子姫の姿は、じっとこちらを見つめているように見える。
トト子姫に伸ばされる手は、水分の抜け落ちてしまったようにしわくちゃな手だった。

風に乗って耳に微かにきこえてくる言葉。

「死にたくない、死にたくない、トト子姫様どうかどうか一生貴方のお傍に」

息も絶え絶えな声は、自分の死期を悟っているのか必死にトト子姫に手を伸ばす。

「そんなにトト子といたいの?」

「はい、トト子姫様とずっと一緒にいたいです」
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