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【おそ松さん】月下に咲くは六色の花

第27章 白無垢よりもウェディングドレスよりもタキシード!?



ジャリジャリと音を立てながら、広い庭を見て回る。

室内から見ていた景色よりもずっと庭は広かったようで、みごとな枯山水や広い池までありTHE日本庭園と呼ぶに相応しい。

上を見れば、色とりどりの梅の花。
本物かはわからないが、太陽光に照らされ花びらが嬉しそうに空を舞い飛ぶ。

「桃源郷みたいですね」

ボソリと零した私の言葉に、ふふっと笑うはトト子姫。

「それって人間が創り出した幻みたいな場所の事でしょ?ここがそんなふうに見えるなんて、お狐様は夢があって素敵ですね」

トト子姫が手を広げると、それが当たり前かのようにその中に落ちる梅の花。

「それは、ここが幻ではないって事ですよね?」

得意げな笑みを零しながら、トト子姫は手の中の梅の花を風に乗せるように空中へと投げ出す。

「そう、ここの梅の花は全部トト子を愛してこうなったの」

ざあっと吹く風、それはどういう事かと思えば妖しく光る瞳。

「分不相応にもトト子に恋した人間の成れの果て」

トト子姫の長いまつ毛が、影を作る。
紅く輝く瞳、なんて憐れな生き物かと見下すように風に舞い飛び遠くへ流されていく梅の花を見つめる姿は、あまりにも残酷で美しい。

「トト子姫様は、人間がお嫌いなのですか?」

恐る恐る口にすれば、やはりまたニコリと微笑む。

「嫌い?まさか?人間は好きよ?扱いやすいし、それにとっても美味しいから。でもどうしてそんな事を聞くの?お狐様?」

紅い瞳が興味を持つように私を見つめる。

「いえ、人を梅にかえるだなんて人間が嫌いなのかと思いまして」

この1本1本の梅の木が人だなんて信じたくはない。
けれど、トト子姫の話を聞く限り本当の事だろう。

だとしたら、一体何百人、何千の人が梅になっているのだろう。

「望んでみんな梅になったのに、その言い方だとまるでトト子が悪いみたい」

「いえ、けしてそのようなことは」

微笑んでいるからこそ相手の本当の顔が見えない。
そのことがどれほど恐ろしいものか、言葉ではもう言い表すことなどできなしない。
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