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【おそ松さん】月下に咲くは六色の花

第27章 白無垢よりもウェディングドレスよりもタキシード!?



「そうだ、お二人共。お庭の梅凄く綺麗でしょう?お庭散策でもしてきたらいかがでしょう?」

ニコニコと笑いながらチョロ江さんは私達を庭へとほだす。

「そうね、せっかくだし一緒に行きましょう?お狐様」

その提案をよしとしたようで、さっと立ち上がるトト子姫。
まあ、私からすると死に場所が畳の上から梅の咲く庭にチェンジしたくらいの違いなんだけれど。

桜の下には死体が埋まってるだとか、桜は死体を食って咲くだとか聞いた事あるんだけど梅は初めてだ。

その犠牲者第1号になるってわけだよね。
実際はわからないけど。

なんて嬉しくない初めてだろうか。
ここまで死ぬ死ぬ思うのは初めての事だけれど、相手が相手だからだろうか?

「お狐様、はやくー!」

「はい、トト子姫」

自分の意思とは関係なくスっと立ち上がってしまう。

もう余程の事では驚かないが、自分の意思と関係なく身体が動くのはあまり気持ちのいいものではない。

さらにもまして危機感を覚えるのは、いつの間に襖の向こうに行ったのかわからないほどの素早い身のこなしと妖しく美しく輝く紅い瞳のせいだろう。

また身体が痺れてきた気がする。

1歩1歩トト子姫のもとに向かう、自分がそうしているのかそうさせられているのかわからないあやふやな感覚。

先程頭がスッキリしたはずなのに、またも梅の香りに当てられたようでフワフワと空中でも歩いているようだ。

行かなきゃとぼんやりと思う。

そして丁度チョロ江さんの後ろを通り過ぎようとした瞬間。

ガシッと手を掴まれた。
ピタリと足取りが止まり、そちらを見つめる。

スっと立ち上がるチョロ江さん。

「襟が乱れてますよ」

ニコニコとしながら私の着物の襟を直してくれる。
これで大丈夫と襟を綺麗にした後、そっと耳元に近づきいつものチョロ松くんの声で私に耳打ちしてきた。

「鈴音ちゃん、僕が絶対助けてあげる」

その声にハッとして、じっとチョロ松くんを見つめる。

見た目はおばあちゃんなのに、いつもと同じチョロ松くんの優しい瞳にコクリと頷いた。
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