第27章 白無垢よりもウェディングドレスよりもタキシード!?
なるほどなるほど、次は私と言うやつか。
なにがどうなっているだとか、もうそんなややこしい事を考えなくたってわかる。
ああ、本当に、ほんとーに美味しい物を食べておけばよかった。
「ねえ、お狐様?」
空中のどこへ向けてよいかわからぬ視線を、呼ばれた先に向け直す。
眉を八の字にして困ったようにこちらを見つめるトト子姫と目が合う。
「お狐様は、トト子が...嫌い?」
おそらく命を狙われたであろう相手にそんな事を聞かれるなんて、ちゃんちゃらおかしい話だ。
好きも嫌いもあるわけない。
だがトト子姫を見てると、すっぱりとそんな事を言えない。
「私は...」
「失礼します」
何かを言わなければと言いかけて、遮られる。
少ししゃがれている感じの声だが、誰だろうか。
スっと開かれる襖の方向を見ていれば、ぶっと吹き出しそうになった。
「当館の女将、チョロ江と申します。」
白髪を一つにまとめて、お茶色にピンクの模様をあしらった着物をきちっと着こなしたおばあちゃん、を装ってるチョロ松くんが現れたからだ。
心の中で、いやチョロ江って誰やねんってツッコミそうになったよ!
既に空っぽの湯のみを持ち上げてなんとか落ち着こうとするも、笑いを堪えるのに必死で手がプルプル震える。
「まぁまぁまぁ、なんて素敵な殿方様ですこと!トト子姫様と並ばれたらまるでお雛様のよう」
元を知ってるだけに、頑張って声を作ってるんだと思えば思う程に笑いをこらえるのが必死だ。
「当然でしょ、トト子はお雛様よりかわいーもん」
ふふんと笑うトト子姫、この人は気づいているんだろうか?
それとも、気づかないふりをするという優しさだろうか?
どちらにしても、何処へ向かっているのか全くわからない。多分私を逃がそうとしてくれようとしてるんだよね?
そう考えてしまうのは独特の雰囲気を身にまとった感じのチョロま、じゃないチョロ江さんのせい。
なんか、ホラーとかに出てきそうな雰囲気なのはどうして?
助け出そうとしてくれているんだよね?
そうなんだよね?チョロ松くん。
一抹の不安とよく言うが、もう一抹どころではない。
百抹の不安だ。