第27章 白無垢よりもウェディングドレスよりもタキシード!?
胸が熱い。
「おそ松、おそ松...」
名前を呼べば呼ぶほど、もう胸の奥がいっぱいになる。
なんだろうこの気持ちは、こんなにも苦しいのはどうして?
「おそ松...」
目を瞑ってまた鮮明に彼の顔を思い出す。
にかっと笑った時の顔、鼻の下を擦る仕草、飄々と掴み所の見えないあの人。
なぜだか、おそまちゃんとやらの顔とダブるのはどうしてだろう。
そしてこの心のうちから溢れ出す感情はなんなの?
あぁ、これは...。
ぎゅうっと胸に手を当て、ふっと微笑む。
この感情をおそ松に持ったのは初めてじゃない。
あの時もこの時もそうだった。
けどそこまで頻繁に訪れるものでなくて、きっと皆が人生の中で1度は経験するであろうあの激しい感情。
こんな絶体絶命の状況だからなのだろう、だからこそ私は気づけた。
この激しい想いに胸を焦がす。
ねぇ、この想いを貴方にぶつけたい。
「おそ松、あいつ...ぜってぇ、殺す」
そうきっと誰もが1度は思う、思ってはいけないかもしれないけど思う。
殺意という名の激しい感情。
どんな事があっても、例え自分が死んでもアイツだけはどんな事をしても絶対絶対殺してやるという揺るがない決意。
こんなややこしい事になったのも、逃げられないこの状況も、ぐわんぐわんして吐き気がするこの不愉快な感じも、あのどうにかなるでしょ主義のどうしようもない馬鹿のおかげだ。
心に誓おう。
アイツだけは私がこの手で引導を渡すと...。
「こんな所で死んでられない、あの馬鹿を殺るまでは」
ニヤリと自分の口角が上がる。
生きたい。
少なくともあの馬鹿よりかは長く生き長らえたい。
でないと、成仏なんてきっとできない。
こんな所で死んでたまるか、あの馬鹿と少なくとも刺し違えるまでくたばるわけにはいかない。
ぐっと握り締めた拳、あの馬鹿に引導を渡すのはもはや使命なのだと心に言い聞かせればするほどに生きる活力がわく。
それはそれで複雑だけども...。