第27章 白無垢よりもウェディングドレスよりもタキシード!?
なんか、お手洗いにしては遅いなと思いつつぼんやりと時間が過ぎるのを待っていた。
梅の花の匂いは相変わらず甘い。
おそまちゃんのおかげであの場はなんとかなった、一瞬頭の中がクリアになった気がしたけど実際はまだぼんやりしてる。
それにしてもあのおそまちゃんとやらは、本当にいったいどこから現れたんだろう?
そんな事を呑気に考えてたけど、辺りをキョロキョロと見渡しながらこの隙に逃げられないかと模索する。
このまま逃げる方が得策な気もするけど、逃げた所でその後どうなるか。
それでなくてもまだこの頭の痺れがとれないのは、ヴァンパイア特有の能力かなにかのせいだろう。
モヤがかかったりかからなかったりを短期間で繰り返してるせいか、非常に気分が悪い。
例えるなら、車で酔ってる最中にミルク飴とか口に残るタイプのものを食べてる感じ。
あ、例えが微妙すぎた。
あれ、とりあえず吐きそうってこと。
上から何かしら出てきそうで、とりあえずそれを誤魔化すためにまたお茶を口に運ぶ。湯のみのお茶を綺麗に飲み干し、さてどうしたものか。
ぐわんぐわんする脳みそを必死に動かし、逃げる方法を考えつつ辺りをみる。
広がる畳、梅の咲く素敵な庭、その庭の周りに立派な木材の高い塀がある。人ひとりが登ってどうこうできるようには見えない。
とすると、普通に出口に向かうべきだけどそれも多分無理だ。
鉢合わせしたら言い訳を考えなくてはならない。
正直嘘をつくことがどちらかというと苦手な私では、下手するとそこでゲームオーバーな気がする。
あぁ、こんな事になるならもっと美味しいものを食べておけばよかった。
刻々と時がすぎる中で、やっぱり年貢の納め時と言うやつかと半分諦めモードにはいりつつある。
ここ最近の事を振り返えれば、やっぱり思い出すのはおそ松の顔だ。
ニヤッと笑うあの顔が、頭の中に鮮明に思い出される。
「...おそ松」
ポツリと名前を呼ぶ。
じんわりと胸にその名が染みていく。
胸が熱くなるのはどうしてだろう?