第27章 白無垢よりもウェディングドレスよりもタキシード!?
甘い香りに酔いそう。
全てをトト子姫にゆだねてしまいそうになった瞬間、声がした。
「あたいはおそま!おそまっていうの」
おかっぱ頭の小さな女の子がにんまりと口を大きく開けて、私達の真横に現れた。
一体どこから現れたんだろうなんてもやのかかった頭で考える。
そして、その女の子の声と同時に甘い香りで痺れていた脳はくっきりと意識を取り戻す。
危ない、私は何してたんだ。
私の腹部の上に乗っているトト子姫。
一歩間違えたら血を吸われてカラカラになっていたかもしれない。
そんな事を思うと、さらにはっきりとしてくる。
そもそもどうなって女の人とこんな淫らな関係になってんだ私は!
「あの、トト子姫よろしいですか?」
できるだけ笑顔を向けつつ、降りてもらえるようにほだせばふわっと腹部から重みが消えた。
「それにしてもー、この子どこから来たんだろー?」
うふふっと笑いながらおそまちゃんの頭を撫でるトト子姫、さっきのは冗談かなにかだったんだろうか。
そう錯覚するほどに空間は穏やかで、相変わらず梅の花が綺麗に咲き乱れている。
「あのね、あっちからきたの」
無邪気な笑顔を浮かべながらおそまちゃんは出口の方を指さす。
なんだか、知ってる人の面影があるんだけど誰だろう。
まだ頭がぼんやりとする中、ゆっくりと身体を起こす。
なんだか、最初の時より身体が重い気がするのは少し疲れてしまったからだろうか。
「ねーねー!あたいおしっこ行きたい!」
眉をさげながらおそまちゃんがそう言った。
いつもならついて行ってあげるんだけれど、今の私は男の姿なので女の子とトイレに行く事はできない。
そうこうしていたらすくっと立ち上がるトト子姫。
「おそまちゃん、私と一緒に行こー?」
にこにこと笑うトト子姫は手を差し出して、おそまちゃんが一緒についてくるのをほだす。
あんなに怖いと思ってたけど、トト子姫の面倒見のよさに和んでしまう。
確かに血は吸われそうになったけど、悪い人ではないのかもしれない。
それだけで決めつけるなら松坊ちゃんの何人かは、すでに悪党だし...。