第27章 白無垢よりもウェディングドレスよりもタキシード!?
「さて、邪魔者も消えたし、これでゆっくり話せますね?」
うふふと笑いながらバズーカ砲を自分の横へと引っ込めるトト子姫。
もうね、さすがに冷や汗が止まんない。
とりあえずお茶でもと手を伸ばし、冷めたお茶に口をつける。
丁度良い苦味が舌に広がり、ほんの少しだけ心が和らいだ。
「ところで、お狐様のお名前教えてくれませんか?」
あぁ、そういえば名乗ってなかったなと思いつつ。
はて名前かどうしよう。
ここで名前を名乗れば、確実に面倒な事になるのは明白だ。ハロウィンパーティーの時の事が頭をよぎる。
私の名前はこの世界で有名になっている可能性が高い、名前を知られれば松坊ちゃん達にまで迷惑をかけてしまうかもしれない。
仕方ない、腹を割ろう。
「トト子姫、私はトト子姫に名乗る程の者ではございません。こんな所にこれるほど高貴でもありません。私は今日それを伝えるために来たんです」
ドッドッドッと心臓が早くなる。
けれど相手から目をそらすのは失礼だと、じっとトト子姫の目をのぞき込む。
ほんの一瞬寂しそうな色をしたかと思えば、にっこりと微笑みゾクリと寒気がした。
「そんな事を言うために来たの?」
微笑みの中に何かが見え隠れする。
背中に氷でも入れられたかのように、ひんやりと冷たい。
「そうです。直接それを伝えるためだけに参りました。」
目を背けたら死ぬ。
なぜだかわからないが、それが頭をよぎった。
「...綺麗な首筋」
ハッとすればいつの間にやら耳元のすぐ近くで声がする。
するりと白い人差し指が私の首元を撫でた。
「貴方もこちらの世界の住人なんだからトト子の事知らない訳じゃないでしょ?」
これは脅しだ。
キラリと輝く牙が目の前にチラつく、かすかに笑う口元にまたもゾクリと背筋が凍る。
庭に咲く梅の花がヒラヒラとこちらへ舞い、私の着物に落ちる。
紅い花弁がこれから零れる自分の血ではないかと連想してしまう。