第27章 白無垢よりもウェディングドレスよりもタキシード!?
「...あ、あの」
乱れた着物の背に話しかけてみれば、くるりとこちらを向く。
さっきの般若顔はどこへ行ったのか、ものすごい綺麗な笑みを浮かべささっと身だしなみを整えはじめるトト子姫。
「こんにちは、お狐様!トト子ずっと、ずっっとお会いしたかったです」
...ま、眩しい。
女の私でも可愛いと頷いてしまう笑顔。
さっきのものすごい形相の女性はどこへやら、女って怖いよね。
まぁ、私も女なんだけどさ。
いや、今は男ですけどもね。
「それは、光栄です。私の様な者の事を覚えていて下さるなんて」
と、とりあえず笑っておこう。
今回は銃を置いてきてしまったために、今の私はなんの力も持たないただの人間だ。
いや、ちゃんと武装したかったよ?
甲冑とかさ、でもお見合いの席でそれもどうかと思ったし、下手な小細工をしてそれがバレた時、きっと命は梅の花みたいに簡単に散りそうかなとも考えた結果だ。
選択を誤ったかもしれない。
まともにやりあうことになったら...。
やめよう、想像しただけで不毛だ。
「あ、あのトト子姫...とお呼びしてもよろしいですか?」
「姫!?ええ!もちろん!」
嬉しそうに瞳をキラキラと輝かせ微笑むトト子姫。
いつの間にか目の前に座っていて、少々驚いた。
それにしても、可愛らしいヴァンパイアだ。
先ほどカラ松をぶん投げたのと同じヴァンパイアなのだろうかと疑ってしまう。
「とーこーろーで?十四松くんとトド松くんは、いつまでそこにいるの?あれなの?トト子とお狐様のお邪魔ってわからない?そっかそっかー、わからないかぁ?じゃあ仕方ないかなぁ?」
じゃきっと物騒な音がしたかと思うと、いつの間にやら手にバズーカ砲を持っているトト子姫。
顔は変わってない、素敵な笑顔だ。
でもそれが逆に怖い、ホラーでしかない。
「すぐに消えマッスル!!!」
冷や汗をだらっだらかきながら、トド松くんを抱えて元の植木へと戻っていく十四松くん。
間違えない、やっぱりこのヴァンパイアはさっきのヴァンパイアだ。
もう現実に目を背けたいんだけど!