第27章 白無垢よりもウェディングドレスよりもタキシード!?
すいすいとスマホを指先で遊ばせながら、ボソリと呟くあざトッティ。
「...ねぇ、鈴音ちゃん、僕とさ逃げない?」
呟く言葉の意図が読み取れない。
それってどういう意味?
開いた口が塞がらないまま、ぽやんとピンク色のヴァンパイアを見つめる。
そしたらバチりと目が合って、サッと目線をそらす。
微かにドクンと音を立てる胸。
「...こっち向いて」
いつの間にかチェリーブロッサムの甘い香りが強くなる。
ははーんまた私をからかってんのかと、サッと目線を離してみれば肩に手をかけられた。
そのまま下へと軽く力を入れられ、椅子に座らせられると少し私の方が高かった身長差がなくなる。
ギシリと椅子のきしむ音だけがやけに響いた。
やはりまた胸がなる。
きっと幻覚かなにかだろう、1度こいつの術にかけられたからわかるけど本当にたちの悪い事だ。
「無駄だよ、あんたの手はわかってる目を見たら終わりだったよね?そう何回もかかると思う?」
ふっと口角をあげて、そうはいくかと息巻いてみれば顎にするりと綺麗な指先が入りこむ。
「...こっち向けよ」
いつもならかわいこぶるくせに、そんな事など微塵もみせない低い声に指先に誘導される前に顔を上げた。
「...ほら、こんな簡単に僕の術中にはまるなんて、スキがありすぎなんじゃない?」
じっと見つめた目はいつもの大きな黒目で、私に何かしらの術をかけようとした様子もない。
息が止まってしまうんじゃないかと思う程に近い距離に、言葉がでない。
チェリーブロッサムの甘い香り、でも何故だかほんの少しだけ交じる紅茶の香り。
いつもより少し大人びた香りのせいだろうか、だからこんなにも胸がなるの?
「...なんで男の姿なんだろうね」
やっぱり言わんとしている事の意味がわからなくて、答えに戸惑う。
眉を下げながら、慈しむように髪を撫でられる。
その光景をただただじっと見つめ、言葉を発する事さえも忘れた。