第27章 白無垢よりもウェディングドレスよりもタキシード!?
そんなこんなで、お見合いを断る事もできずやってきてしまった当日。
「鈴音ちゃん、すっごい...ぷぷぷっ、綺麗だよ」
あざトッティがくしを片手に半笑いしていた。
「いや、全く嬉しくないよ。綺麗って褒められてこれ程までに嬉しくなかった事ないなんて人生初経験だわ」
鏡の中の自分を死んだ魚のような目でみながら、はぁっとため息をつく。
その姿はハロウィンパーティの時のキツネの姿、つまり男の姿だ。白く尖った耳に、九本のふあふあの尻尾が揺れている。
長い黒髪をたなびかせて、くるりと一回転してみればふわりと着物の袖が舞う。
「あのさ、普通こういうのってスーツとかタキシードとかじゃないの?なんでこう、平安貴族みたいなみやびな格好なの?」
全体的に白、袖口のリボンが赤、巫女さんかなにかみたいな衣装に戸惑う。こんなの生きてるうちに着るとか思わなかったよ。
「んー、やっぱり普通の着物の方がいいかなぁ」
頬っぺに人差し指をそえ、あざといポーズをきめ首を捻らせつつもパシャリとその姿をスマホにおさめる。
いったいこれで何度目だろう。
「ねぇ、激しく聞きたくないんだけど、なんで毎回写メとんの?」
「えー?それ聞く?そんなの決まってるでしょ?生きて帰れるわけないんだから今のうちに遺影をとっといてあげよーって!」
こいつ、人事だと思いやがって...。
「聞くんじゃなかったわ、いつか始末してやるからなクソ末弟が...」
「その前に死ぬのは鈴音ちゃんだよ?」
にーっこり笑いながら言われると、ぴきりと怒りの筋がキレそうになる。それもこれも全部馬鹿松のせいだ。
せめてあいつだけはこの手で仕留めたかった。
「あーあー、つまんない幕引きだよね。」
はぁっとため息を吐くあざトッティ、つまんないってそれだけですむか!?
もう一言何かしら言ってやろうと思ったら、くりくりの黒い瞳がスマホ画面を見つめている。
他人事だと思いやがって...。