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【おそ松さん】月下に咲くは六色の花

第26章 揺れる心〜愛の逃避行、無垢なる笑顔と恋のlabyrinth〜



にゃおん、と高く鳴いたキャットはじっと俺を見つめる。

どうやら、何かを訴えているように思えるんだが残念ながら俺はキャット語はわからない。

防波堤から降りてキャットに近づき頭を撫でた。

「こういう時、一松ならお前の声をきけるんだがな」

困ったように笑えば、キャットはズボンの裾を噛みグイグイと引っ張る。

「どうしたんだ?いきなり?」

問いかけてみれば、何故わからないのかとでも言いたいのかズボンを引きちぎらんばかりに激しくなっていく。

あぁ、せっかくブラザーが選んでくれたというのにな。
すまないトド松。

「おいおい、このコスチュームは俺の愛しのブラザーが...」

「にゃあ!!!」

黙れとでも言うように俺の言葉を遮ると、キャットはズボンを噛むのをやめて走り出す。

「ウェイト!キャット!何処へ行くんだ!?」

呆気に取られ、数秒...。
何かを思い立ったかのように足が動いた。

走り出したいと思っていた願いが通じたかのように、俺はキャットを追って走り出す。

オレンジ色の背中を追いかけ、駆け出す足は何故か軽やかだ。

冷たい風が頬を撫で、はあっと息を吐けば白い煙が口から出る。
それを速く繰り返し、前へ前へと進む足。

何処へ向かっているのかはわからないが、追いかけなければならない気がした。

空を飛ぶ方がきっと何倍も速いはずだが、踏みしめた地面が目的をハッキリとさせてくれているような。
なんとも言えない気持ちだ。

先程まで考えていた事を忘れてしまうほど、足は速くなっていく。
それは目の前のオレンジが加速しているからだろう。

幾人の人混みをかきわけ、必死にオレンジ色を追いかける。

小さなその色は、必死に追いかけなければ見失ってしまう。
体力には自信があるが、さすがに獣を追うとなれば話は別だ。

どこに行こうというんだ?
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