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【おそ松さん】月下に咲くは六色の花

第26章 揺れる心〜愛の逃避行、無垢なる笑顔と恋のlabyrinth〜



「...レディ」

「...俺は馬鹿だ」

はて、今何故か声が聞こえたのだが?
ふと横を見てみれば、いつの間に起きたのかキャットが俺を見ていた。

「ふっ、またしゃべったのか?元気そうでなによりだ」

「本当はこんな事してる場合じゃないのに、レディ本当にどこへ行ったんだ」

おかしい、何故だかキャットがしゃべる言葉が俺の思った事ばかりだ。

「具合が良くなったならよかった。すまないがお前もわかるだろう?俺は行かないと...」

そう言ってその場を去ろうとすると、ぐいっとキャットが服の袖口を引っ張る。
まるで、行くなとでもいいたげに...。

「お前本当は...」

「一松が一緒にいるのか?」

俺が言葉を発する前にキャットが低い声で俺の考えをいい当ててしまう。

言葉を発した後じーっと俺を見つめたキャットは、ニャーと一言低く鳴いた。

どうやら俺の勘は当たってしまったらしい。
俺はフッと笑いぽんぽんと膝を叩いた。
その行動に気づいたらしく、俺の横に座っていたキャットはゆっくりとした動作で立ち上がる。

とことことキュートな歩幅でこちらへ歩み寄り、ポスリと俺の膝の上で丸まった。

「ふっ、これじゃあ動けないな」

そんな事を呟きながら、そっとキャットの頭を撫でる。いつもなら逃げるはずのキャットだが、今日に限って俺の膝の上で大人しくしていた。

「なぁ、キャット...」

潮風に当てられ肌寒いスカイとオーシャンの間に地平線が見える。

「...思った事があるんだ。きいてくれるか?」

防波堤に座り、オーシャンの方へのばしている足は地についてはいない。
不安定で少しコールドだ。

けれど膝の上の温もりが俺を温める。

「...胸が...苦しいんだ。レディが他の誰かといると思うと...」

片手で胸をおさえ、もう片方はキャットを撫でる。
ズキリとする胸の痛み。

この感情を言葉にするなら...。

「本当は走りたい、でも今行ったらきっと一松が辛い思いをする。せめて少しでも...」

キャットはいとも簡単に俺のハートの中身を言い当てた。
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