第26章 揺れる心〜愛の逃避行、無垢なる笑顔と恋のlabyrinth〜
「さて、本当にどうしたものか」
キャットが泡を吐き出し倒れた為、休めそうな海沿いの防波堤まで来てみたが...。
スカイがブルーだ。
1羽のカモメが大海原を行く。
こんな時いつもなら歌いだしたいと思うのだが、どうにも今はそんな気分ではない。
「レディ、泣いていないだろうか?」
傍らに置いたポンチョを見つめ、そっと撫でる。
こんなつもりではなかった。
喜ばせたくて頑張った事が、こんなふうに裏目に出てしまうだなんて...。
いつもなら何でもないように振る舞えるんだが、事が事だけに心中はただ事ではない。
早く見つけ出すべき、だが...。
ポンチョが置いてあるのと別の方をみれば、ぐったりと横たわっているブラザーの相棒。
一松がこのキャットの事を可愛がっているのは知っている。それにアルとも仲良しだ。
つまりは、二人の大切な仲間なのだろう。
それを蔑ろにはできない。
「困った...」
はあっとため息を吐くと、白い息がオーシャンとスカイのブルーにそっと溶け込んで消えた。
「それにしても、コールドだ」
ぶるっと身震いをした後に、上着を脱ぐ。
「たしか、キャットは寒さに弱いんだったな?」
ぱさりとキャットに上着を被せれば、冬の風はさらに俺に追い打ちをかけるように吹きすさぶ。
「...レディのハンドは温かかったな...」
じっと手のひらをみつめ、レディの小さな温もりを思い出せば自然と顔がほころぶ。
だが、それは一瞬だ。
それと同時に胸が潰れそうになる。
大丈夫だろうか?
泣いてはいないだろうか?
本当は心配で、心配でたまらない。
手を擦り合わせ、はあっと息を吹きかけてみるが暖かくはならず。虚しく指の間を通っていくだけだ。
どうしたものかと途方に暮れ、ただスカイを見るしかない。