第26章 揺れる心〜愛の逃避行、無垢なる笑顔と恋のlabyrinth〜
「まっ、ともかくその呪文を忘れないよーに!後、これ服な?人間の多い場所だから」
手渡された紙袋、たしかに今のマント姿じゃ目立つか。
「にゃーん」とオレに擦り寄ってくるエスパーニャンコ、どうやら一緒に行きたいらしい。
いつもアルと一緒だったし、たまにはこいつと外に行くのもいいか。
「んじゃ、俺が一松のことカラ松と鈴音がいる近くまで飛ばしてあげる」
喧嘩止めてもらったし場所も教えてくれるって言うし、まぁ野口さん取られたけど....。
「...りがと」
「んー?なんて言ったの?聞こえなーい、もっと大きな声でー」
「ありがとう!おそ松兄さん!好き!」
「へっ?」
明らかにオレの声じゃない、ちょっと渋い感じの声。オレの声じゃないけど、オレが思ってるそのまんまの事をそのまんま暴露してる。
「あ、あぁあぁぁぁぁぁ!!!!」
そうだ、だからだ!だからオレ、最近こいつと行動を共にしてなかったんだ。
良くも悪くもおしゃべりなエスパーニャンコ。
オレの心のHPはもう0になりかけてる。
「そっかそっかー!お兄ちゃんも素直になれない不器用な一松が好きだよー」
「やめろおおぉぉ!このクソちょ...」
「はいはい、いってらっしゃーい」
満面の笑みを浮かべ、最後まで言葉を発する前に指をパッチンしてオレを移動させやがった。
殺す、ぜってーいつか殺す!
くそっ!こうなったのも全部全部全部ぜーーーんぶ!
クソ松のせいだ!
あいつのせいだ!
せいぜい首を洗って待ってろやクソ松!
鈴音とデート?!
ふざけやがって!
昨日の麻雀の時から見てたけど、ぜってーぜってーそんな事させてたまるかってんだクソがぁぁぁ!!!
今朝とか楽しそうに弁当作りやがって....。
オレなんか、オレなんか...
...チッ!
見つけ出してはりつけにして、あらゆる拷問器具を用いて後悔させてやる....。
ヒヒッ、待ってろよクソ松...。