第26章 揺れる心〜愛の逃避行、無垢なる笑顔と恋のlabyrinth〜
バチバチとピンク色の稲妻が光る中で、オレとトド松が睨み合ってたら真横から声がした。
「...お前らやめとけ?なっ?アルもさがれ」
にっこり笑ってそう言ったのは、おそ松兄さんだ。
気配を消しつつもオレ達の後ろで警戒してたアルの名前を呼び、喧嘩を止めに入る。
「あー、やだやだ!兄弟喧嘩なんてさ?あれだよ?殴り合いならまだしも力まで使っちゃうとかダメだよー?誰が後始末するか、わかってんのー?」
にっししって笑ってるけど、これ多分ちょっと怒ってる。
「でもおそ松にいさ...」
「トド松、お前の気持ちはわかるから、でも今回はお兄ちゃんの顔たててくんない?じゃないとチョロちゃんが後始末しなくちゃならなくなるからさ?」
「って!後始末すんの僕かよ!」
すかさずツッコミを入れるチョロ松兄さん、ほんとうまく誘導するよね?
こうやって雰囲気をぶち壊す。
「まーでも?お兄ちゃん的には?一松は今回ちょーっと言いすぎたんじゃないかなー?って思うんだけど?」
ちらっと横目でそう言われて、一応謝れる雰囲気もつくってくれてるなんて事わからないほど馬鹿じゃない。
「...ゴメン」
そう言ったのはオレじゃなくて、エスパーニャンコだ。
「いやいや、お前に代弁して欲しいわけじゃないんだけど」
呆れ顔のおそ松兄さんにすかさずフォローを入れる十四松。
「あっ、でもでもエスパーニャンコは気持ちを伝えるんだよね?!ほら?だからね?喧嘩よそう?ねっ?ねっ?だからトド松許してあげて?」
「...十四松兄さんがそこまで言うなら...」
周りの稲妻がなくなって、空間の歪みもおさまる。
それと同時にオレはエスパーニャンコをぎゅうっと抱き締めて、皆のいる部屋から飛び出した。
オレだってそんな事言いたかった訳じゃない。
ただ、あんまりにもなって欲しくなかった事態になってしまっているから。
だから....。
ただの八つ当たり。
どこかにぶつけなきゃやってらんなくて。
こんな時に丁度いいサンドバックソ松は居ないし。