第26章 揺れる心〜愛の逃避行、無垢なる笑顔と恋のlabyrinth〜
ここ最近の皆がおかしい。
「あー!鈴音ちゃん!超絶可愛いよ!鈴音ちゃん!」
「もう!うるさいよ!そんなに叫ばなくたってわかるよ!当たり前のこといわないで!」
トド松が撮った鈴音の写メを見て、目をハートマークにするうるさいチョロ松兄さん。
ピンク色のあざといスマホ画面にうつるのは、鈴音の今朝の姿らしい。
どーでもいいけど...。
「いやーもう、お兄ちゃん鈴音ちゃんに骨抜きだわー、そうだ!帰ってきたら今度は俺とデートしよってさーそおっと!」
鼻の下を擦りながらおそ松兄さんが笑う。
「はいはいはいははいはーい!いいすか!?いいすか!?僕もすずちゃんとデートしたいっす!」
パタパタと長い袖をふりながら十四松はおっきい口をあけて叫び出す。
ここ数日、鈴音が小さくなってから皆が皆、鈴音、鈴音ってうるさいったらない。
「なにがそんなにいいんだか...」
ぷいっとそっぽを向いていたらエスパーニャンコがオレの側に擦り寄ってきた。
猫と今の鈴音なら猫の方が可愛いに決まってる。
ふわふわの毛並みを楽しみながら、膝の上で遊ばせていたらトド松がオレに写メを見せてきた。
「ほーら!みてみて!かっわいいでしょー?僕がおめかし手伝ってあげたんだよ?」
得意気にそんなもの見せてくるもんだから、ぷいっとそっぽをむき、懐から猫じゃらしを取り出しトド松がいる方と逆側でふりふりとふった。
「にゃーお」と低めの声と共に、オレの膝から降りたニャンコが猫じゃらしにじゃれつく。
「あれ?きょーみないの?こーんな可愛いのに?」
ひょいっとトド松からスマホを奪い取ってオレに見せてくるのはおそ松兄さんだ。
「興味?何それ?幼女趣味?オレには全然理解できない」
猫じゃらしをふりながらそう言ってみる。
「そんなんじゃないよ!皆鈴音ちゃんが可愛いって思ってるだけじゃん」
珍しくつっかかってくるトド松、正直な所いけすかない。
「お前よくそんな事言えるね、お前でしょ、鈴音の事あんなふうにしたの」