第25章 戦士の安らげる場所〜愛の逃避行、カラ松onrabu編〜
ハッとして目を覚ます。
大きな水槽の前に俺はいた。
どうやら眠ってしまったようだ。
このほの暗さと青が混じった空間がどうにも居心地が良すぎたせいだろうか。
俺とした事がとんだ失態をしてしまった。
デート中に眠ってしまうだなんて。
「レディすまない、さぁアシカさんを...」
俺は隣の席を見つめて、固まった。
そこに居るはずの人物が見当たらなかったからだ。
「レ...ディ...?」
慌てて立ち上がれば、ぱさりと床に落ちるベージュ色の小さなポンチョ。
それはレディが着ていたものに違いなかった。
落ちたポンチョをぼんやりと眺め、頭の中が真っ白になった。
なぜだ?
なぜ寝てしまった?
いくら元々大人だったとしても、どんなにしっかりしていたとしても、レディは今は小さな女の子なんだ。
1箇所でずっと留まっておくことが退屈になるなんて予想できたはずだ。
「レディ...」
あたりを見回してみるが、レディらしき影はない。
可愛らしいブーツの音もしない。
すんと鼻に全神経を集中してみるも、色んな人の匂いが混じっていてレディの香りだけを特定する事は難しそうだ。
落ちたポンチョを拾ってほこりをはらう。
ポンチョを叩いた瞬間にレディの甘い香りが鼻腔を駆けていく。
その香りに徐々に頭が冴えていく。
真っ白な頭の中、一つ答えが浮かび走り出す。
「どこだ!どこに行ったレディ!」
小さなポンチョを小脇に抱えて俺は水族館を走り回った。
消えてしまったスモールレディを探すために...。