第25章 戦士の安らげる場所〜愛の逃避行、カラ松onrabu編〜
「あぁ...」
たった一言、俺はそう言って笑った。
ちらりと盗み見た水槽に映る自分の姿は、あんまりにも嬉しそうで、幸せそうで、レディの為に来たはずなのに俺の方が幸せでいっぱいだ。
ポカポカと胸の中が温まっていく。
不思議だな、レディといると心が温まるんだ。
いや、不思議ではないか。
こんなに愛おしいレディといるんだからな。
ジンベエザメに釘付けになっているレディを見ながら、ふと思い出すアシカの事。
そろそろいかないとショーが始まってしまう。
「レディ、アシカショーはどうする?」
「あっ!うーん、でももう少しジンベエザメ見たい」
遠慮がちなレディに、俺は笑いかける。
好都合にもジンベエザメのいる水槽の前にソファが置かれている。これならジンベエザメも見れるし、足を休ませられる、まさに今の俺達の為に存在しているソファだ!
「俺も同じ事を考えていた、そこにソファがあるから少し休もうか?」
「うん!」
レディの手をひき、先にソファに座れせ隣に座る。
じっと二人してジンベエザメを見つめ続け、まったりと時を過ごす。
同じ景色を、同じ時、同じ目線で見れる事は幸せな事だと何処かで聴いた事を思い出せばふっと笑ってしまう。
あぁ、確かにこれは幸せな事だ...。
優しいまどろみの中で幸せな事を考えていれば、視界がゆらゆらと揺れてくる。
海が見える。
青い青い海が...。
「カラちゃん?」
愛しいレディの声が、遠く遠く...。
「眠いの?」
船に乗っているような感覚がする。
ふわふわゆらゆらと揺れに揺れて、それがとんでもなく心地よくて逆らえそうにない。
「...って...カ...ちゃ...」
最後まで聞き取る事ができない。
昨晩は麻雀やらお弁当の用意やらで寝ていなかったせい...か?
徐々に重くなる瞼。
あぁ、もうどうにでも...。
完全に視界が黒に染まり、俺は深い深い眠りの底へと落ちていく。