第25章 戦士の安らげる場所〜愛の逃避行、カラ松onrabu編〜
「レディすまない」
先程のカラ松ガールから少し離れた所で、俺はレディに謝った。もっとスピーディかつスマートにレディがいるからと断ればよかったものを、レディの手を煩わせてしまった。
「私がごめんなさいだよ?どうしてカラちゃんが謝るの?」
事の顛末を知りしょんぼりとうなだれるレディ、どうやら勘違いしてしまった事に反省しているようだ。
薄暗い館内が余計にレディの表情を曇らせて見せる。
俺がこんなに可愛いレディを1人にするわけがないというのに、不安がらせてしまったようだ。
それなのに、あんなふうに言ってくれたことが嬉しいだなんて悪い事を考えてしまう。
やはり俺は罪な男だ。
そっと肩からレディを降ろして、レディの前にしゃがみこむ。
「俺はレディがああ言ってくれた事が凄く嬉しいんだが許してくれるか?」
ほの暗く青い空間が広がる水槽の前で、思った事を口にすれば弾けんばかりの微笑みを浮かべて、大きく頷く。
その次の瞬間、レディは大きくマウスを開けて後ろを指さした。
「カラちゃん!あれ!」
その一言と同時にくるりと後ろを振り返れば、俺もまた十四松のように大きくマウスをオープンする。
「「ジ、ジンベエザメ!」」
二人して同じ名前を並べ、思わず立ち上がる俺。
広い広い水槽の中に悠々と佇む大きな大きな影はまるで...!
いや、よそう言葉にできない、一言で表すとするならば圧巻というやつだろう。
「うわぁ、おっきーーーーい!」
美しい青い水玉模様でその身を着飾る姿、どんな者が近づいてきても微動だにする事はないであろうその存在感。
まさに、水族館のキングと呼ぶに相応しい!
なのだが、ジンベエザメに気を取られていたのも束の間で俺の視線の先にはレディの姿があった。
キラキラと星が瞬いているようだ。
未知なるものを見る時のその瞳は、本当に美しく煌めいている。
俺の視線に気づいたのか、こちらを向くレディ。
少しの沈黙の後、にっこりとまた笑ってレディは俺に言う。
「やったねカラちゃん!ジンベエザメ見れて!」
同じ気持ちを分かちあおうとするその笑顔が、あまりにも愛しい...。