第25章 戦士の安らげる場所〜愛の逃避行、カラ松onrabu編〜
コツコツと小さな可愛らしい靴音が館内のあちらこちらに響き渡る。
水槽を見つける度に一生懸命俺へ手を振るレディ。
「カラちゃん!こっちだよ!!カワウソだよ!かわいーね!」
流木が置かれた陸のある水槽に、つぶらな瞳のカワウソがちょろちょろと走り回っている。余程カワウソが気に入ったのか、レディは両手を水槽につけてベッタリと張り付いていた。
「ふむ、可愛いな。名前は...チョロリンとチョロチョロ?」
何故だろうな、この2匹の名前がどうにも親近感がわく。それにしても、ラティス・マグナリアだとかディボルフォン・ア・ラ・カルトだとかの名前の方がいいんじゃないか?
「ふふっ、チョロちゃんだ」
そう言って微笑むレディ。
少し妬けるぞチョロリンにチョロチョロ...。
そんな事を考えながらふと水槽の先を見ると、1箇所だけ出っ張りが見える。
「ほぅ?カワウソとハイタッチ?」
透明な箱のような出っ張りはカワウソのいる水槽と繋がっているようだ。小さな穴が空いているが、なるほどここにカワウソが手をいれて、こちらは指を入れるわけか。
「レディ、カワウソとハイタッチできるようだぞ?」
「本当に!?チョロちゃんとハイタッチできるの?」
キラキラと瞳を星のように輝かせるレディが眩しい。
それにしても、やはりカワウソの名前が気に食わない。カラリンとかカラカラとかではダメなんだろうか?
「フッ、レディこっちだ」
心の中の葛藤を隠しつつ、レディを手招きする。
嬉しそうに駆け寄り、小さなつつの中に可愛らしい指をチョンと入れてワクワクと待つレディ。
後はカワウソさえ来てくれればいいのだが。
.....3分経過。
ふむ、あちら側で2匹で戯れているようだが、来てくれるのかこれは?
.....5分経過。
ほう?何やらチョロリンもチョロチョロも2匹して泳ぎだしたぞ。
....10分経過。
いや、もうこいつら2匹ともこちらへ来る気はないだろう!?
これでは来るぞ来るぞ詐欺じゃないか!?
こんなにレディが待っていると言うのに!俺ならばすぐに飛んでいくぞ!!