第25章 戦士の安らげる場所〜愛の逃避行、カラ松onrabu編〜
「カラちゃん、手」
小さな温もりがグッと握りしめていた手を包んだ。
いつの間にか階段が終わり、ほの暗く青い海の底のような世界が広がる中でレディは俺を見上げていた。
「手震えてる、寒い?」
大きな水槽の中を自由に泳ぎ回る色とりどりの魚達、その真ん中でうっすらと俺達がガラス越しに映り込んでいた。
そっと自分の口元へ手を持っていくレディをぼんやりと見つめる。
はぁっと小さな声が聞こえればほんのりと熱くなる手。
「レディ...?」
ゴシゴシと小さな手で一生懸命に俺の手をこするレディ、その様は健気でそれでいて愛おしい。
「あったかい?」
にこっと笑ってそんな事をいうものだから、胸をグッと締め付けられる。
「あぁ、レディ、やっぱり君は愛しいエンジェルだ」
今までの葛藤が嘘のように消えていく
今までの葛藤を誤魔化していた事が絡みついてくる
正反対の二つの思いがぶつかり、ハートはパンク寸前だ。
罪の意識はあっても認められない自分は弱いのだろうか...。
「まだ、寒い?」
不安げに揺れる瞳、俺とした事がレディに心配をかけてしまうだなんてとんだ失態だ。
せっかくのデートなんだ、レディにはたくさん笑って楽しんで欲しい。
「いや、レディのおかげでこのカラ松のハートは暑くなっている!」
「暑いの?」
「え?あっ、いや、えーと、その、とても温まった、ありがとうレディ」
小首を傾げるレディにあたふたと返事をし、ふっと笑ってしまう。
女の子というだけで小学生でも緊張と、言われていたいつぞやのあだ名はどうやら間違えだ。
レディには幼女でも緊張してしまうんだからな。
俺に様々な想いをもたらすエンジェルは、スモールでもトールでも変わりがないようだ。
「カラちゃん!早く早く!」
愛らしい微笑みを灯して俺を引っ張っていく姿が、ガラス越しに見える。
これじゃまるで、俺がレディにエスコートされているみたいだ。
ーーねぇ、カラ松?生きるっていうのはさ?きっと辛くて、でも前を歩き続けるしかないと思うの...
「...レディ」
「なぁに?」
「...すまない、呼んでみただけさ」