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【おそ松さん】月下に咲くは六色の花

第25章 戦士の安らげる場所〜愛の逃避行、カラ松onrabu編〜



滝と岩をすり抜け、階段を下へ下へと降りていく。

レディの手を引きながら切ない感情に苛まれるのは、きっと俺達には永遠に手に入らないものを見てしまったからだろうか。

長く生きていると色々な感情が欠落していく。
永遠を生きる代償というやつだろうか、どちらにしたって今考える事ではないのにな。

どうにもレディといると考えさせられてしまう。

水が落ちていく音を背に、カツンカツンと靴を鳴らすと小さな音がついて来る。

「ねぇ、カラちゃん?」

声に振り向けば、優しい顔でエンジェルが笑う。

「カラちゃんも美しいんだね?」

どくんと音が鳴る。
心臓の奥深くに杭を差し込むような、そんな衝撃が俺をうつ。
ぐるりと巡った記憶の中に、生命を奪った事がないわけではない。

どんなに人間のフリをしても、血を飲むのを抑制したとしても、消えない罪の1つや2つ簡単に思いは出せる。

レディ、違うんだ。
俺は、俺達は、レディとは違う生き物なんだ。
そんなふうに笑わないでくれ、そんな優しく笑わないでくれ。

赤く染まった柔らかい頬と、暖かい体温。
くわえてこの小さな少女がレディだという事実が首を絞める。

ゴクリと喉がなる。
純粋な者の血ほど美味いものはないんだ、と思い出してしまうのは何故今なんだ?

愛おしい者の血ほど甘美なものはないんだ、と思ってしまうのは本能だろうか?

寝不足のせいか、それともこの存在が愛おしいと感じてしまうせいか?

きっと日光を浴びすぎたせいで、また心の目眩にさいなまれているんだろう。


「カラちゃん?」

「あっ、いや、なんでもないんだ」

「私、悪いこと言った?」

眉を下げるこの可愛い子に、俺は自分は違うんだと言えなかった。

自分は汚れている生き物だと、それだけでなく生命を奪っていたんだと言えるはずがないだろう?

「いや、初めて、そんな事を言われたんだ。だから、嬉しかったんだよ、レディ」

すまないレディ、俺は臆病ものだ。
嫌われることが怖くて仕方ない...。
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