第25章 戦士の安らげる場所〜愛の逃避行、カラ松onrabu編〜
巡る景色、家や人やビルが忙しなく流れていき、もうすぐ目的地だ。
「レディ次の駅で下りるぞ?」
その言葉が合図となって、小さな手が俺をぎゅうっと掴む。
本当は、空を飛んで行こうとも思った。
何故わざわざ電車に乗ったのかというと、まだ小さなレディに俺達は人間でないという事を告白できていなかったからだ。
それでなくとも怖がりなレディが、俺達が人ならざる者と知ったらと思うと怖くてたまらない。
これは最初のうちからだが、それを誤魔化す為に、レディがきてから全員が暗黙の了解のように露骨に血を飲むことをしなくなった。毎朝皆で飲んでいる飲み物それぞれに血を入れて飲むようになっていた。
大人のレディが俺達が人間でないことを知っているのにも関わらずだ。
全員が全員同じ事をした。少しでも人間のようにとでも思ったのだろうか?
滑稽な話だ、と笑いたくなるだろう?
本音を言うと、きっと全員が全員、レディの血を貪りたいと思っているはずなのに...
そんなおり、レディが幼くなってしまいヴァンパイアである事を隠すのに必死になってきている。
同じなんだ、俺達皆、レディに拒否される事を極端に恐れている。
例え翼をもがれたとしても、この小さなレディの傍に居られるのなら俺はかまわない。
この子と笑っていられるなら...
小さな手が俺を強く握りしめるたびに、そんな事を思いながら電車に揺られた。
「カラちゃん!」
俺の名前を呼ぶ可愛らしい声で、現実に呼び戻される。
「ついたよ!いこー!」
満面の笑みで俺を見つめ手をひっぱってきてくれる。
レディ、君の笑顔を見るためならなんだってしてやる。
馬鹿みたいな人間の真似事だってなんだって...
「すまない、少しサンシャインに当てられてしまったみたいだ!」
「大丈夫なの?」
心配そうな顔をしつつ電車から下りる。
ふっ、少しサンシャインが眩しすぎたかな。
あまりにも平和すぎて...な...