第25章 戦士の安らげる場所〜愛の逃避行、カラ松onrabu編〜
少しすると駅のホームからアナウンスが聞こえてくる。実は俺はあまり、というかほとんど電車とやらに乗ったことがない。
まぁ、これでもヴァンパイアだしな。
なんせ移動は空を飛べばこと足りる。それに俺は他のブラザー達と違って姿も消せるから、好きなだけこの大空を飛べる。
そうこうしているうちに、電車が俺達の目の前に到着し音を立てて扉を開けた。
「さぁレディ、足元に気をつけてな?バーン!」
片手で銃を模した手をし、もう片方でレディの手をしっかりと繋ぎながら電車に乗り込む。今日が休日の為か、人が多い。
キョロキョロとあたりを見回して、空いている席にレディを座らせた。
「カラちゃんは?」
「レディ、言ったろ?レディファーストだ」
そんな事を言っていたら電車が音を立てて扉を閉める。ガタンゴトンと揺られながらつり革を持ち、窓を見る。身体をひねらせて窓の外を見つめ、目をキラキラとさせているレディが窓の反射でわかると顔が綻んだ。
「レディ、なにか見えるか?」
「んーとね、車でしょ?家でしょ?あっ!公園だ!」
はしゃぐ姿に胸がじゅんと濡れて熱くなる。
あぁ、夢なら夢なら覚めないでくれ!
そうこうしているうちに、また電車のドアが開く。
ぷしゅうと、音がして乗りこんでくる人の中に白髪の婦人がいた。
すかさず走り出すはマイエンジェルだ。
「おばあちゃん、ここよかったら」
にこりと笑っておばあちゃんの手を引く、柔らかく嬉しそうに笑う婦人はレディにお礼をいう。
そんなレディを誇らしく思うこの気持ちは、親心とでもいうのか?
目を細めてレディの頭を優しく撫でれば、レディもまた誇らしげな顔をして俺を見上げる。
「お嬢ちゃん、ありがとうね?今日はお兄ちゃんとお出かけかい?」
「うん!あのね、カラちゃんがねいい所に連れてってくれるんだって」
はしゃぐレディに婦人は柔らかく笑い、レディもまた楽しそうに話をする。
電車というのにあまり乗らなかったが、これから利用するのも悪くないかもしれないな。