第23章 3時のおやつは愛をこめて
「あげないよ!」
オドオドしていた心を、真っ直ぐな言葉がじわじわと温めていく。
「えー?くれないの?なんで?」
頬ずえをついたまま、そんな質問する優しい顔した馬鹿が一人。
「だって、美味しいし!これチョロちゃんが作ってくれたんだもん!」
その一言にニカッて笑って、そっかぁじゃあしゃーないな?ってくしゃくしゃと鈴音ちゃんの頭を撫でる。
「だってよ?チョーロちゃん?」
ポカンとしている僕に、話をふってくるやいなや、あっとぉ、俺そろそろ行かないとって言って姿を消してしまう。
認めたくないんだけど、本当はおそ松なりに心配してくれてたのかもしれない。
「チョロちゃん!ありがとう!とっっても美味しいよ!」
口にいっぱい生クリームつけちゃって、嬉しそうに笑う小さな鈴音ちゃんがたまらなく愛しい。
なんだか、妙に感動してきちゃってツーンと熱くなる鼻の奥。
「どういたしまして...」
そう言って笑ったら、ポロって1粒涙が零れてしまった。そんな僕の元へ慌てて椅子から飛び降りてこちらまで走ってくる鈴音ちゃん。
僕の服の裾をグイグイと掴んできたから、しゃがんだら小さな手で僕の頭をよしよしする。
「泣かないでチョロちゃん?とっても美味しいよ?あと、後ね嫌いなんて思ってないんだよ?大好き!だから泣かないで?」
一生懸命僕にそうやって伝えてくれたことが、嬉しくて思わず鈴音ちゃんを抱き上げる。
「僕も、僕も鈴音ちゃんが大好き」
コツンとおでこをくっつければ、二人して笑い合う。
大人の君に伝えられなさそうだから、今たくさん伝えるね。
「ふふっ、鈴音ちゃん口にクリームついてる」
「えっ?ど...ひゃっ!」
ぺろっと生クリームをなめてみてしまったりなんて、大人の君には絶対できない。
「恥ずかしいよ、チョロちゃん」
「ん?ごめんね?うん!美味しくできてる!」
その話をケーキのことで誤魔化して、笑う。
「罰として、また今度ケーキつくってね??」
そんな罰なら喜んでうけるよ。
可愛い天使が笑ってくれるなら、僕は努力を惜しまないよ?
いつだってお菓子に、君への愛をこめてあげる...