第23章 3時のおやつは愛をこめて
「さてと、とりあえずケーキ食べようか」
そう言ってフォークを鈴音ちゃんに渡す。
「ねーねー!俺のぶ」
「黙ってろクソ長男」
笑顔でそう言いながら、鈴音ちゃんの小さな口の中へケーキが運ばれるのを見守る。
「じゃあ!いっただきまーす!」
パクッと口の中に入るケーキ、少しの沈黙が僕を不安にする。
レシピなら舐めまわすほどみたけど、実践するのはこれで何回目だろう。指で数える程しかないから、正直自信が無い。
「チョロちゃん」
名前を呼ばれてビクリと体が跳ねる。
やっぱり不味かったのかな?
「ご、ごめん鈴音ちゃん!次は美味しく作るからね?」
自分の顔は見えないけど、きっと今の僕は困った顔してると思う。揺れる赤いティーカップの中身に映る顔は、予想通りだ。
「なになに?そんなにマズイの?んじゃお兄ちゃんの口の中にもちょーだい?」
鈴音ちゃんのフォークを取ろうとした瞬間だった。
さっとフォークとお皿をおそ松から遠ざける。
えっ?っとおそ松と二人して目をまんまるにすれば、ティーカップの中身がお皿を避けた反動で波打っていたのが、ピタリと止まる。
「ダメ!これは私のだもん!だから白うさぎのお兄ちゃんにもあげない!」
口に生クリームをつけたまま、真っ直ぐな瞳で言うものだから僕は言葉を失う。失った言葉の変わりに頬ずえを付きながらニヤッと笑いかけるのは、おそ松だ。
「ふーん、それ、鈴音ちゃんの大っ嫌いな人参入ってるのに?」
どうやら僕の魂胆がおそ松にはわかったみたいで、僕の目が泳ぐ。なんのつもりで暴露しちゃったのかわかんないんだけど、元々言うつもりだったんだけど、嫌われたくなくて言えなかった。
そんなことをサラリと言ってしまう。
「えっ!?そうなの!?全然気づかなかった!」
大っきい目をぱちくりさせる鈴音ちゃん。
やっぱり人参が入っていたことに、気づいてなかったみたいだ。
これ、また僕嫌われちゃうパターンなのかな?
なんて思いながら、心の中で大きくため息をついた。