第23章 3時のおやつは愛をこめて
また本に埋れて、ガックリと肩を落としていたら目の前に初心者向けの本を見つけた。
「あっ、これなら僕にも...」
パラリとめくる分厚いページ
初心者向けとデカデカと書かれた本は、ずっしりと重い。
「なになに、まずはお菓子の器具?それから、計り方?」
1から丁寧に写真付きで説明してくれる本は、とても良心的でわかりやすい。
「ふーん、分量はきっちり計るのか」
赤い大きめの文字で、分量は必ずきちんと計りましょうと書かれてて、それがどれだけ重要な事かがわかる。
「意外と細かい作業の積み重ねなんだな...」
計る、粉をふるう、混ぜる
典型的な日本人にうってつけじゃないか?
面倒な作業をすっ飛ばしてしまう人には、向かないかもしれないけど
おそ松とか、十四松とかは無理そうだな。
「へー、面白いな」
本の山の中見つけた一つの書物は、僕からしたら高かった壁を壊していく。
パラリパラリパラリという軽い音とともに、頭の中へ新しい知識がはいりこむ。
苦手意識から入ったものは、知識が入りにくい。
それは最初から苦手だと思い込み、ストップをかけてしまうからだ。
でも、裏を返せば楽しいから入ったものは知識が入りやすい。それは自分が好きなことだともっとしたいという欲求にかられるからだろう。
粗方の知識を頭に叩き込んで、今度はケーキのページへと進む。
美味しそうな写真付きのケーキは、どれもこれも綺麗でキラキラとしている。
本当にこんなのが作れるんだろうか?
なんて思いながらも、グイグイと本に引き寄せられる。
あぁ、もし
もしもだ
鈴音ちゃんと、こんなケーキをつくれたらきっと楽しいに違いない。
そう思うと、への文字が緩む。
凄い勢いで知識が頭を駆け巡っていく。
「そうだ、ミルフィーユの作り方はある...かな?」
何気なくページの目次から探し出して、ミルフィーユのページを開く。
何気なくなんて言ってみたけど、本当は嘘
初めからそういうつもりだったんだ。
話が、鈴音ちゃんと話がしたい
その一心だった。