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【おそ松さん】月下に咲くは六色の花

第23章 3時のおやつは愛をこめて



ドサッバサ!ドサドサドサー!!!

物凄い音が響いた。

「な!!なに!?」

びっくりして叫ぶ鈴音ちゃん、それに反応してこちらへと走ってくるのはアルだ。

マズイ...

固まる僕をよそに、ふんふんと僕の周りをくるりとまわる番猫。

ダラダラとたれる汗の量は、尋常なものではない。
じーっとこちらを見た後で、小首を傾げた後にアルは静かに鈴音ちゃんの元へと走っていった。

「アル、さっきの音なに?」

「にゃー?」

どうやらバレなかったみたいで、ホッとした。
それと同時に、本の山の中から必死で這い出す僕。
本当に情けないというか、ドジというか、ポンコツというか...

ネガティブ思考の一松にでもなってしまったようだ。

ふうっとため息を一つ吐いてから、くいっと人差し指をあげれば空中に浮かぶたくさんの本。

「こんなにあるとか、どんだけなの」

けほけほと咳を一つ二つ、指を左右に動かしながらパラパラと本をめくる。

「ミルフィーユ...ミルフィーユっと」

たくさんの本の中から探し出すワード。
あれでもないこれでもないとパラリパラリ本をめくれば、膨大な数のレシピが僕の目の前に立ち塞がる。

「えっ、作り方って一つじゃないの?」

なんて、当たり前なこと。
分量が違えば味も違う。

こってりも、あっさりも、甘いも、苦いも

人の舌がある分だけ、レシピは存在する。
でもその時の僕には理解できない事だらけだ。

どうしてこんなに分量が違うのかだとか、香り付けのバニラエッセンスとバニラビーンズの違いだとか

トド松がお菓子を作れるけど、それがこんなにすごい事だったとか知らなかった。

それはもはや未知の世界。

「情報量多すぎ!」

キッチンに聞こえない程度の声で叫ぶ僕を嘲笑う、お菓子という名の甘い壁。

投げ出したくなる情報の数に、がくりと肩を落とす。

それと同時にまた本が降ってきて、生き埋めになりそうになった。
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