第23章 3時のおやつは愛をこめて
鈴音ちゃんの赤い瞼が、元に戻ったころに僕はハッとした。
「あっと、そろそろ出さないと」
鈴音ちゃんに気を取られていて、すっかり卵を忘れていた。
鈴音ちゃんをゆっくり降ろすと、僕は冷凍庫をガララとあける。
中からひんやりした卵を取り出して、これくらいならいいかな、なんて思いながらキッチンへ運ぶ。
コンコンと卵を平らな所で、2回軽く叩く。
「チョロちゃん?」
僕の後ろを小さな歩幅でちょこちょこと着いてくる鈴音ちゃんが、ヒヨコみたいで超絶可愛い。
「ちょっと待っててね」
ほわんと胸を温かくしながら、お菓子作りを再開する。
パカッと二つに割れた卵の殻を使って、卵白と卵黄を分けていく。結構コツがいるけど、何度も何度もやってるから僕には普通にできること。
「わー!チョロちゃん上手だねー!」
キラキラの瞳が眩しい。
魔法みたいだと笑う鈴音ちゃん。
卵で手が汚れてなかったら抱き上げてスリスリしたい。
「これくらいは朝飯前だよ!」
鈴音ちゃんの一言でのぼせ上がる僕。
小さくなっても彼女の一言に一喜一憂するのは、変わらない。
「あっと...また忘れるところだった」
そういいながら、キッチンの周りを見渡してみるけど目当てのものがない。
はて?どこにやったんだろなんて思ってたら、いつの間にか目線が少しだけ高くなっている鈴音ちゃんがいた。
「これ??」
甘くて白い粉の袋を小さな両手で確りと持って、これでしょう?って誇らしげに僕に差し出してくる。
何これ、可愛い通り越して鼻血ふくわ!なんて叫びたくなるのを必死におさえる。
「そ、そうだよ!よくわかったね!」
その一言に、えへへって嬉しそう笑う。
まるで天使が降り立ってるように神々しい。可愛いなんかじゃ言い表せられるわけない。好き、大好き、普通に好き、いや!普通に超絶大好き!
大袈裟?これが親馬鹿ともとれる感情なんだろうか。
保護者松...ね。
もうヴァンパイアという肩書きを捨ててもいいかもしれない。