第23章 3時のおやつは愛をこめて
ポタリポタリ
音がなるんじゃないかってくらいあふれる涙は、床を濡らしていく。
「チョ...ロちゃんは...悪..く.ない...ごめんな...さい」
ヒックヒックといいながら、一生懸命言葉を紡いでいく。僕はその言葉に黙って耳を傾ける。
「ふえっ...きら...わ...ないで...」
胸が痛い。
こんなに泣いてしまって、僕がそんなことで嫌うと思ったの?
僕が鈴音ちゃんを嫌うことなんてあるはずないのに...
「嫌わないよ?こんなに泣いちゃって...」
困ったように笑いながら、柔らかい頬を伝う涙をすくう。触れた肌は少しでも力をいれたら、傷ついてしまいそうでビックリした。
「本当?」
大きな目が僕を見つめる。
瞳の中に映る自分は、とっても柔らかく笑う。
「本当だよ?僕が鈴音ちゃんを嫌うことなんてあるわけな...」
言いかけた瞬間に胸の中に飛び込んでくる温もり。
「ごめ...ん...なさ...い」
小さくなってしまった鈴音ちゃんは、とってもとっても繊細でこんなにも傷つきやすい。
ぎゅうっと抱きしめたまま抱き上げる。
おでこをピタリと合わせて、ニコリと微笑む。
「もういいんだよ?ほら?僕は怒ってないから、ね?」
「うん、うん...」
頬に小さな手が触れる。
柔らかい手が、僕を一生懸命包もうとする。
目と目を合わせれば、キラキラと強い光を放つ瞳。
どんなに小さくなっても、鈴音ちゃんの強い光は同じだ。
僕の大好きな女の子はここにいる。
ふふっと笑えば、もじもじとしだす鈴音ちゃん。
何かを言いたげな瞳を覗き込む。
どうしたの?って優しく優しく声をかければ、頬をりんごみたいに染めてじいっと見るんだ。
「あっ、あのね?チョロちゃんって呼んでもいい?もう、呼んじゃってるけど...」
「いいよ?鈴音ちゃん、これで仲直りだよ」
そう言ったら、花が咲いたみたいに嬉しそうに笑った。