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【おそ松さん】月下に咲くは六色の花

第23章 3時のおやつは愛をこめて



「やっぱりメレンゲって作るの難しいな」

分厚い本をパラリパラリとめくる。
あの時は上手くできたんだけど、やっぱり慣れないことって難しいよね。

「あっ、なるほど卵を冷凍庫に入れて冷してしたら上手くいくのか」

知らなかったな、まだこの本は読んでなかったから。
パタンと本を閉じて、冷蔵庫に入っている卵を冷凍庫にうつす。

「そういえば、鈴音ちゃんが用意してた卵凄く冷たかったっけ?なるほどね」

卵が冷えるまで時間ができちゃった。
あぁそうだ、生クリーム泡立てなきゃ。

そんな事を考えながら、クルリと後ろを向けば
キッチンの入口付近から、青い袖がちらりと見えた。

「...鈴音ちゃん?」

ボソリと呟くような感じで言葉をこぼすと、青い袖が揺れる。

「どうしたの?」

優しい声できいてみれば、戸口を小さな手で握りしめながら顔をちょこっと出す。

その行動が可愛らしくて、僕は思わず顔を綻ばせた。
数歩歩み寄ってから、鈴音ちゃんの近くでしゃがみこむ。

「ねぇ、お菓子は好き?」

僕の問いかけに、少しづつ顔を出してこくんと頷く。

「僕もね、お菓子好きなんだ。食べるのもだけど、作る方がもっと好き」

「おじちゃん、お菓子作れるの?」

じいっと僕を見る目に、キラキラと色がつく。


「んー、勉強中なんだよ?」

「お勉強してるの??」

小首を傾げる姿がなんとも可愛いらしい。
僕はそっと鈴音ちゃんに手を差し出す。

「僕は、チョロ松。君の...君の名前、教えてくれないかな?」

知ってるけど、もう名前呼んじゃってるけど、それでもこの子の口から聴きたいんだ。


「私、私はね、鈴音だよ」

「初めまして、鈴音ちゃん。さっきは怒ってごめんね」

その一言に、幼い顔が眉を下げる。
もじもじと両手で手を擦りながらチラチラと僕をみる。黙って見ていたら、じわりと涙が瞳を潤ます。

「違う、違うよ...私が悪い子なの...」

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