第23章 3時のおやつは愛をこめて
「可愛いなぁ、食べちゃいたいくらい可愛い」
高い高いしながら、ニカッと笑うおそ松。
うん、わかるけど、お前がいうと冗談に聴こえないから怖いよね。
忘れてると思うけど、僕らヴァンパイアだからね。しかもお前、前科持ちじゃん。
流石に小さい子の血を吸うことはないけど、そんな事したら罪悪感で死ぬわ、しようとしたら全力で殺すわ。
「いーないーなー!僕にも!僕にも抱っこさせてよー!」
可愛いアリス争奪戦のなかで、素直すぎる十四松がある意味羨ましい。
「ダーメ!アリスは今は俺のー!」
子どもか!子どもが子ども抱っこしてんの!?
なんだこれ、なんのほのぼのだよ!
求めてないから!そんなこと多分求めてないから!
「違うよ」
そんなほのぼのな雰囲気を一気にぶち壊したのは、おそ松の腕の中で高い高いされてる鈴音ちゃんだった。
キョトンとする僕らに、ニコって笑う。
「アリスって呼んでいいのは、チェシャ猫のお兄ちゃんだけだよ?鈴音が1番好きなのはチェシャ猫のお兄ちゃんだもん」
微笑みの爆弾とともにフラれるおそ松。天使のような微笑みで、とんでもない核爆弾を落とすあたりが、鈴音ちゃんらしい、そしてそれは幼女になっても健在。
爽やかな笑みのまま固まるあたり、なかなかにショックだったんだろう。
小さい子って、時々残酷なこと言うよね。
なんかいたたまれなさ過ぎて、黙る僕ら。
チェシャ猫がすでにいるとか聞いてない。
「でも、お兄ちゃんの目、とっても綺麗だから好きだよ?だからね、だから特別に名前教えてあげる!」
ニコニコ笑う鈴音ちゃん。
子どもって時として、とんでもない殺し文句言うよね。しかもそれがさ、普段ツンケンしてる人が幼女化して言うとどうなる?
「ぽぅ!ぽおおぉう!そっかー!好きかー!うんうんうん!教えて教えて!」
この通りデレデレ馬鹿の出来上がり。
「あのねぇ...」
こそこそと小さな手でおそ松の耳元を隠しながら、一生懸命内緒話する鈴音ちゃん。
さっき自分で名乗ったこと忘れちゃってるあたりが、これまた可愛い!そしてクソ長男羨ましすぎだろ!