第23章 3時のおやつは愛をこめて
「いや、トド松はセイウチだろ」
そう言ってニカッと笑うのはおそ松だ。
「えー?セイウチなんてでてくるのー??おそ松兄さん!」
食い気味で質問してくるのは、十四松。
十四松はイカレ帽子屋ってとこだな、イカレてるし。
「んー?あれだよ、オイスター騙して食べるセイウチがいるんだよねー。あれでしょ!しかもセイウチとトドって似たようなもんだし」
爆笑しながらナイスなチョイスをする。
ダメだわ、笑いしか出てこないわ。
「セイウチ...?」
不思議そうに首を傾げる鈴音ちゃんは、可愛いアリスにしかみえない!
「そ、れ、に!アリスが追いかける白うさぎは俺だよーん!」
だーっはっはって笑いながら、言う。
「どうして、お兄ちゃんが白うさぎなの?」
にかっと笑ったおそ松は、目を赤く染めた。
ルビーみたいな深いワインレッドの中に、幼い鈴音ちゃんが映り込む。
その目を見た瞬間に、こいつチート使いやがったって本気で思った。
「うさぎさんの目は赤なんだろ?だから俺が白うさぎ」
「本当だ!」
またしてもキラキラの笑顔を零しながら、トド松の腕のなかでジタバタしはじめる鈴音ちゃん。
まあ結論からいいますと
「まぁ、ぶっちゃけた話、セイウチとか別にいてもいなくてもいいよね?」
「あっはっは!セイウチいらないぜ!」
僕の発言に、イカれた帽子屋こと、十四松がトドメの一言。
トドだけに
「悔しかったらお前も、本物の白うさぎになってみたら?」
煽りかたに悪意しかないおそ松に対し
「このクソ兄どもが!トドとセイウチは全然ちがうし!そもそもルックス担当な僕がセイウチなわけないじゃん!」
「いやお前ルックス担当ってほどじゃないだろ、あざといだけ、すぐ飽きるよね」
間髪入れずに塩を擦り込みまくる一松。
って、さっき助けてもらってたよね?!
なにこの不毛な争い。
その微妙な努力を少しでも違うことへ向けてくれたなら、きっと偉大なこと成し遂げられると思うよ。
「赤い目、綺麗!」
そんなことはお構い無しでニコニコしながら、おそ松の頬を小さなふあふあの手が包む。
美味しいとこを全部かっさらっていくあたりが、おそ松らしいっちゃらしいけど。
長男のドヤ顔に苦虫でも噛み潰した気分になるのは、きっと僕だけじゃない。