第22章 ラストダンスは猫の手をかりて
チリンと鳴るのはなんの音?
チリンと呼ぶのは誰の声?
ニヤリと三日月を浮かべて笑う猫が、私を見つめる。
男としての欲と、悲しみを秘めた瞳で捕えられる。
撫でられる内股から、奪われていく体温。
どうして彼の手はいつも冷たいんだろう?
秋から冬にかわる冷たい風のせいだろうか、そのあまりの冷たさに身体がびくりと震える。
ううん、違う
違うの
チリンチリンと鈴がなる。
一松くんがここにいるのが、わかる音...
漏らす声が、あんまりにも自分のものとは程遠くて。
火照る身体が、自分とは程遠くて。
「ねぇ、なんでフィッシュテールにしたかわかる?」
声をおさえるために、ねじ込んだ人差し指が、自分の口内を血の味で染めてく。
なんの意味のある質問なのだろうと、頭を捻らす余裕なんてない。
冷たい指先が残す痕跡に、頭がおかしくなりそう。
「わからない」
漏れ出すように答えれば、ニヤリと笑う。
「鈴音さ、オレのこと猫みたいって言ったの覚えてる?」
意図がわからない質問に、口をおさえて頷けば返される答え
「魚は猫の好物だから」
繋がる意図
あぁ、まんまと私は魚にされてしまったんだ。
核心へと向かう指と、それを誘うように揺れる紫と黒。
彼の好きなものになって、彼の好きな色に染まって。食べられないはずがない。
「まっ...ここ、外...」
いいかけた瞬間に唇を奪われて、しゃべることができない。
苦しいのに、抵抗することもできない私はイケナイのだろうか。
漏れ出す吐息が、次の欲求を求め出す。
ダメだダメだと思えば思うほどに、深く深く落ちていく。
絡められる舌が熱くて頭がぼーとするだとか、意識がふあふあするだとか
そんなの誰かが考えた、都合のいい嘘
都合のいい言い訳
鮮明に残されていく、一松くんという存在が
一松くんの舌の感触、唾液の甘さ
私を見つめる、バイオレットの瞳
松野 一松が私のココロに刻まれていく。