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【おそ松さん】月下に咲くは六色の花

第22章 ラストダンスは猫の手をかりて



「欲しい?...一松?」

そえられた手から、ジワジワと焼かれているようで熱い。

ニヤリと三日月を口元に描く。

「...欲しくないと思う?」

それでいい
それでいいよ

無理に記憶を取り戻さなくても、それでもいいんだ。

だってオレが鈴音を置き去りした事実は、消えないんだから

許してなんて言わない
このまま思い出さない事がオレへの罰なら、喜んで受けるから...

だからもう苦しまないで鈴音

そっと鈴音の首筋キスを落とす。
思い出が苦痛なら、僕が今の痛みで満たしてあげる。

「いいよ、あげる...だから、抱きしめて一松、ここに居るって教えて...」

どうして
どうしてそんな、泣き出しそうな顔で僕にそんな事を言ってしまうの?

鈴音を自分の中に閉じ込める。

ドクンッと鳴る心臓、どす黒くて馬鹿で、どうしようもない想いが渦巻く。

それを愛と言うなら、きっと重すぎる。
ぺろりと舐める首筋、あぁ、鈴音の味だ。
両目に熱を感じる、身体が鈴音を欲してる。

どんなにどす黒い感情を綺麗に包んで隠したって、本能は鈴音を求めてる。

ぐっと捩じ込む自分の牙が、容赦なく鈴音に突き刺さる。

甘い甘い味が口内に広がって、それなのにどうしてこんなにしょっぱいんだろう。

甘い味と自分の涙が合わさって、言葉にならない味がする。

オレの与える痛みに、自分の薬指を唇にあてて必死に声を我慢する愛しい子。

そうするのはきっとオレの為、オレの心を少しでも軽くするため。

馬鹿だね、本当に馬鹿
昔から

君が僕のアリスだった日から、ずっと...

首筋に唇をつけながら、そっと頭を撫でる。
さらさらの黒い黒い髪が風に靡く。

ーーーやっぱり、鈴音は長い髪が似合うよ?だって、僕の可愛いアリスでしょう?

過去に言った言葉を、心の中だけで唱える。
もう言えない言葉を思い出して、同時にその時の光景を思い出す。

そうオレが言った後に、目をはらして泣いていた

幼い鈴音を...
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