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【おそ松さん】月下に咲くは六色の花

第22章 ラストダンスは猫の手をかりて



一松くんの唇を、赤い雫が汚す。
自分の唇をペロッと舐めると、ニヤリと笑う。

「やっぱり、鈴音の血は美味しいね」

揺れるバイオレット、その目に写る私は酷くいやらしい顔をしている。

「ねぇ?足りないんだけど...」

はあっと艶やかな吐息を吐きながら、危険という言葉を目に宿して私を見つめる。

逃げようにも利き手をとられてはどうすることもできない。それならばと、一松くんの唇に触れる。

「欲しい?一松...?」

もう何が何だかわからない。
ただこの時に溺れたいと感じる。

封じられた記憶への恐怖
その封を開けたいと願う気持ち
思い出してあげたいと思う気持ち

それ全部混ぜてしまえば、何もかも目をそらしたくなってくる。今この時に溺れるのは悪いことなの?

ギリギリの理性が私を止めようとするも、その理性から突き落とすのは他でもない目の前のヴァンパイア。

「...欲しくないと思う?」

耳元で響く声、その後すぐに首筋にキスを落とされる。

「いいよ、あげる...だから...抱きしめて一松...ここに居るって教えて」

なんて浅はかな私
なんて馬鹿な私

坂を転がり落ちて行くように、加速する願い。
せめて貴方の闇を照らせないなら

どうしてこう思ってしまうのか、そんなこと今は些細なことだ。

ただそうしたいだけ...

首筋に感じる熱い吐息、ゆっくりと手が後頭部に回され、片方の手は腰にまわされる。
首に生暖かい舌が這えば、それは噛み付く合図だ。息をゆっくりと吸い込む。

「あっ!んっ、ふぅ!!」

ズキリと首筋が痛んで、漏れそうになる声をおさえるために一松くんが噛んだ人差し指で口を押さえた。

じわりと広がるかすかな血の味、同じものを今貪られてるんだと思うと脈打つ心臓。

その後にやって来る痛みが、切なさを連れてくる。
痛くて痛くてたまらない、それなのにその原因の彼を必死に掴む。

それに答えるように、ぎゅうっと抱きしめられる。
逃がさないとでも言われているように、強く強く

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