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【おそ松さん】月下に咲くは六色の花

第22章 ラストダンスは猫の手をかりて



「残念ー」

「えっ?違うの?」

ものすごい低めのテンションで、語尾を伸ばす一松くん。まずクイズ番組の司会者はつとまらないだろう。

「やられた事をやり返せじゃなくて、倍返しの様な過剰な報復はやめて、同等の罰でとどめて報復合戦の拡大を防ぐでした」

何それ、今その意味になんの意味があるの?
首を傾げた瞬間、撫でられていた頬からゆっくりと首もとに人差し指が下りてくる。

冷たい指先が、首筋をつうっと撫でていくとゾクゾクと背中が粟立つ。

「でも、それがきくのはあくまで対等の身分の者だけ...」

耳元で内緒話をするように、低く掠れた声が聴こえた。

「ねぇ?鈴音とオレなら対等だと思う?」

ふうっと熱い吐息が耳をくすぐる。
身体の力が少しづつ抜けてゆくのが自分でもわかる。
身体中にジワジワと広がってくる熱が、私を蝕んでいく。

「まぁ、どっちにしても鈴音の答えのままなら、やり返していいって事だよね?」

ゾクッと大きな波が身体に押し寄せ、足を1歩後ろへ下げるも、コツンと腰辺りに当たる白い石の手すりが私の逃げ道を塞ぐ。

一松くんとの距離は数センチ。

「一松く....ん...?」

「僕と同じ気持ちにしてあげる」

切なげに見えた瞳、その瞳に囚われた瞬間、腰を引き寄せられて深く口づけられた。

「んっ...んんっ」

開いたままの目が一松くんを映す。
目を瞑って、私を貪る彼が月明かりの下ではあまりにも妖艶なのに悲しげで儚い。

熱い舌に舌を絡めとられて、唇を離すこともできず。
逃げようにも手すりと、彼の腕が私を逃がさない。

もうこのまま一松くんに貪られたいと感じれば、自然に閉じていくまぶた。

何も言わず、ただ私という存在を貪る。
目で見なくとも彼という存在を痛いほど、身体に刻まれる。

彼の体温は冷たいのに、熱すぎて燃え尽きてしまいそうだ。

冷たい風がいくら吹こうとも、熱を冷ますことない。
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