第22章 ラストダンスは猫の手をかりて
ズキリズキリとやって来る痛みが連れてくる、一つの答え。
昔の消えた一部分を探し出そうとすると、記憶の本を破っていくように頭が痛む。
ビリビリとそのページだけ破かれていくような感覚。
思い出したいのに思い出せない、記憶のページ。
頭が痛み出すのは、決まって一松くんと一緒にいる時で
記憶のページを戻す鍵は、彼なのだと何処かでわかっている。
思い出せたらきっと一松くんは、その闇から開放される。悲しい目をしなくなる。
私のせいで人を悲しませるのは、もう嫌だ。
頭を押さえながら、引きちぎられたページを必死にかき集める。
その度にやって来る痛みは激しさを増す。
心配そうに見つめてくる一松くんに、大丈夫だと笑いかける。
そんな中でふと、これまでの事を繋ぎ合わせば出てくる答え。ああ、そうか初めから聴いてしまえばよかったんだ。なんて馬鹿だったんだろう。
「一松くん...私...もしかしてどこかで...いっ」
ガラスにヒビが入るみたいに、頭に激痛が走る。
叫びだしたくなるほど頭が痛いのを、ぐっと堪えた。
思い出したい、思い出してあげたい。
そしたら一松くんが悲しむことはなくなるんだから
私、私は...
もう少しで答えに手が届きそうなのに、ページを掴めそうなのに
そんな私の記憶を奪ってしまう、一松くんのキス
手は冷たいのに、唇は熱くて溶けてしまいそうだ。
せっかく手に取れそうだった記憶をいともたやすく奪いとられる。
悲しみと艶やかな色気を秘めた瞳、やっぱり彼は刹那で消えてしまう紫の空のようだ。
髪を絡め取られ、みつめられると痛みがすっと消えていく
記憶がまた薄れてゆく。
「今、言いかけたこと、忘れて」
どうしてという前に塞がれる唇。
髪を優しく掴まれながら、深く深く口づけられる。
深すぎて息ができない...
言葉も記憶も、全部かすめ取られていく
溺れていく...