第22章 ラストダンスは猫の手をかりて
目を丸くしたかと思うと、ほんのり染まっていく頬。
「そ、え、あっ、あり、がと」
ゴミの言葉にそんなに動揺するんだ。へへっと照れくさそうに笑う鈴音
...オレの言葉に、そんなに嬉しそうに笑うの?
撫でていた頬が熱くなっていく、オレの手もそれと同じように熱を帯びる。
隠しきれない想いが手に集まって、その熱が自分の血管を伝えば心臓が激しく動く。
...愛しい、愛しい
....愛おしい
側にいるだけでいいなんて、思えなくなるくらい。
でもだからこそ
言えない
言葉で伝えなくても伝わるなんて、そんなの幻想。ただの人間の戯言にすぎない。
伝えなければ伝わらない
だから、伝えない
もう同じように失うのは嫌だから
今この時を、鈴音といれるだけでそれだけで充分なんだと自分に嘘をつく。
忘れられることがどれほど悲しいかなんて、もう想像するだけでも嫌だ。
撫でていた頬から手を離す。
熱を帯びた手は、鈴音から離れて熱を失う。
切なさが連れてくる愛しさが、苦しい。
苦しくて息が出来なくなりそうだ。
それなのに、愛しいと想う感情は消えない。
その証拠に、離せない手は鈴音の腕を捕まえたまま。
諦められない
震える手は力なく、でもしっかりと鈴音を捕まえて離さない。
諦めたい、これ以上なにも望みたくなんてない
望むことすらおこがましい
オレはゴミ、ただのゴミ。
それなのに自分がゴミだったことを忘れてしまう。
自分が人間でないことを忘れてしまう。
欲しいと願っても手に入らないことはわかってる。
望んだ結果の先にあるものだって、オレには見えてる。そう、きっとまた忘れてしまう。根拠のないことを並べて誤魔化す気持ち。
欲しいなんて言えるわけない。
言ってしまったら、もうきっと息ができないままだから。
ずっと苦しいままだから