第21章 ハロウィンの夜は危険がいっぱい?
助けなきゃ...
すくむ足を必死で動かして、僕は床を2回蹴る。
鈴音ちゃんを助ける事だけを考えた。
異端と呼ばれることと、鈴音ちゃんを失う事とどっちが苦痛かなんて天秤にかけるまでもない。
必死に手を伸ばす。
肩に鈍い痛みがやってくる。
向けられる剣、それが純銀性とどこかで気づいていた。
こいつが狙ったのは鈴音ちゃんであって、鈴音ちゃんでない。僕らの誰かだ。
一瞬の出来事は、まるでスローモーションのよう。
僕を守ったがために、ボロボロになってしまった鈴音ちゃんを強く抱き締める。
いつの間にか解けてしまった魔法は、鈴音ちゃんを元の姿へと戻していた。
甘い匂いと、僕の血の匂いが混ざる。キンっと金属音が響けば、ほんのりとセッターの香りがした。
それより少し後、鈴音ちゃんを庇いながら後ろへと倒れこむ。震えが止まらない腕、怖くないと言えば嘘になる。
「鈴音ちゃん」
震える唇が君の名前を呼ぶ、僕の問いかけに言葉が途切れ途切れになりながらも返事が返ってくれば、泣きそうになる。
生きてる、ここにいる、それを感じたくてもう1度強く抱き締める。
「大丈夫そうで、よかった」
まだ体が震えているせいか、心臓の鼓動が速いせいかわからないけど、単調な言葉しか言えない。
ゆっくりと鈴音ちゃんを抱き上げる。
僕は自分の弱さに負けて、君を汚した。
それなのに僕を見つめる瞳は、初めて出会った日と変わらない。
僕の力が綺麗だと言ってくれた日を思い出す。
あの時の光景が、今でも頭から離れないんだ。
手に力をこめて、僕の嫌いなライトグリーンの光を手に宿す。
僕の嫌いな光
ずっと忌み嫌っていた
異端者と言われ続けた
そして
君が綺麗だとそう言ってくれた僕の力
その光を宿してそっと頬に触れれば、鈴音ちゃんの頬にある傷を治していく。
僕の心の傷が閉じていくように、君の傷口もゆっくりと閉じていく。
もう僕は自分の弱さに負けたりはしない。