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【おそ松さん】月下に咲くは六色の花

第21章 ハロウィンの夜は危険がいっぱい?



「口の減らないメイドには困ったもんですなぁ、聞くに耐えない。耳障りだ」

ちっと舌打ちを交互でする。
恐ろしい剣さばきだ、追うこともできなかった。
どんなに妖怪に化けたところで、それは模造品でしかない。

それにどちらにしても後少しで薬の効き目が切れる。

「考え中の所悪いが、その耳障りな声がたまらなく嫌でね?なに命まではとらない、喉を潰すだけだよ?お嬢さん?」

ヒュンっと空気を切る音がする。

...万事休すか

目を瞑った瞬間、キンっと高い金属音が鳴り響き、暖かい何かが私を抱きしめる。

柔軟剤の香りが私を包み、いつの間にか魔法の解けてしまった体を庇いながら後ろへと仰け反る。

その肩越しに見えるのは、もう一つの大きい背中。

「いくら無礼を働いたとしても、うちの可愛い弟とお姫様に手を出されるのはちょっと許せないなー?」

私の喉元を狙ったであろう剣を止める剣、その持ち主はいつもと変わらないおちゃらけた喋り方でそう言った。

ただし包む空気は、いつものおちゃらけた空気ではない。

初めて会った時の、有無を言わさない圧迫感を何倍もしたものがビシビシと伝わってくる。

「おやおや、松野家長男ではありませんか。貴方と剣を交わらせる事ができるなんて光栄ですね」

「僕も貴方と剣を交わらせる事ができて、胸糞悪いですよ。とりあえず今日の所はお引き取り願えますか?」

ピリピリとした空気

その光景に圧倒されながらも、恐る恐る上を向けば心配そうに揺れる瞳と目が合う。

「鈴音ちゃん」

カタカタと震える腕が、私を強く抱きしめる。

「チョロ...松く...」

言葉が途切れ途切れになりながらも、チョロ松くんの名前を呼べば大丈夫そうでよかったと笑う。

ふと肩を見れば、裂けたタキシードから血が線を書くみたいにジワリと溢れていた。

「ごめんな、チョロ松、ちょっと掠っちまったか」

「いや、ありがとう。おそ松兄さん」

私をゆっくりと抱き起し、右手にライトグリーンを宿してそっと私の頬に触れた。

「ありがとう、鈴音ちゃん」

ニコッと私に優しく笑いかけた後で、チョロ松くんは真っ直ぐに東郷を見据えた。
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