第21章 ハロウィンの夜は危険がいっぱい?
ボンっという音ともに白い煙が立ち込めて、空中に消えた。
チョロ松くんが元の姿に戻って、私にニコリと微笑む。
うん、やっぱりチョロ松くんはその姿の方がいいよ。心の中でそう思いながら、アザゼルを導く。
指先から感じるかすかな震え、チョロ松くんがバイオリンを演奏してくれるからか、余計に周りの見る目が集まる。
沢山の目が私達に集まる。
ふと周りに目を向ければ、微笑んでいるのはトド松くんだ。
この事態を引き起こした首謀者は、無邪気な笑みで手をふる。
その横で、ちょっぴり顔を赤くしながら見守る一松くんと、トド松くんの後ろでロリポップをガジガジしながら両手をふる十四松くん。
その様子を見ている間も小さな手は、私に不安を伝えてくる。
カタカタと震える手を強く握り、その不安を取り除くように囁いた。
「大丈夫、私に任せて下さい。貴女は一生懸命練習していたでしょう?だから大丈夫」
私の瞳をじっと見つめて、コクンと頷く小さな女の子。
もう後にはひけない。
アザゼルの背に手を添える。大丈夫、大丈夫と何度も心の中で唱える。
目を瞑って深呼吸を一つ。
本当は怖くてたまらない、足がガクガクと震えているような感覚が心臓を冷やす。
でも、私は今は男
目の前にいるこの子を導くのが、今の私のしたいこと。
不安を気取られぬように、アザゼルに微笑む。
何度も思い返すのは、カラ松とダンスした時のこと。
不安に思う私の背に添えられた手を思い出す。
この人なら大丈夫、守ってくれる。そう安心出来るように添えられていたあの手を....
ステップは男女逆、何度も頭の中で再生する。
どんなことがあっても、絶対に不安を気取られてはならない。
何故なら、目の前のアザゼルの方がきっと何倍も怖いから。
そっとアザゼルの左手を横へ持っていく。
「右手を、私の肩に....」
柔らかな笑みのを浮かべ、アザゼルを導く。
恐る恐る添えられた右手
それが合図かのように、チョロ松くんのバイオリンが高らかに音色を響かせた。