第21章 ハロウィンの夜は危険がいっぱい?
「ま、待ってください、私は故意にしたつもりはありません!」
そっと女の子を床に寝かせて、チョロ松くんと同じ目線になる。
近くで見ると本当にイケメンだ、なにこれチートか何かじゃないの?
「故意ではないなら尚更たちが悪いです」
くいっと長くて白くて細い、美しい人差し指で眼鏡をあげながらそう言われた。
「私は一つの目的のためにここに来ました。変な言いがかりはよして頂きたい」
こちらも負けじとじっとチョロ松くんの瞳を見つめる。重い沈黙の中、意外な発言をしたのはチョロ松くんだ。
「....その、瞳.... 」
眼鏡の奥で、チョロ松くんの瞳がかすかに揺れる。
「僕の、愛しい人に....似ている....? 」
じっと見つめられる瞳。
どんなに姿、形が変わったとしても、チョロ松くんという人、いやヴァンパイアはかわらない。
「それに....... 美しい黒髪...? 」
ハッとしたように、目を丸くするチョロ松くん。今ここで正体をばらされる訳にはいかない。
何故ならば先程二人の戦いのすぐ近くに、私の目的である相手がそこにいたからだ。
チョロ松くんが口を開く前に、私が先に言葉を並べる。
「チョロ松様、私は今宵ただの一匹の狐....
そして私は、一人の女の子の為に来たのです。
どうか、その次の言葉は胸にお秘め下さい」
見つめあう瞳と瞳
たとえ二人の姿が違っていても....
貴方はいつもそう、私の話を聴くときは私の瞳をじっと見つめる。
「なるほど、わかりました。ですが僕もこのままで引き下がることはできません」
パチんと指を鳴らすチョロ松くん。
美しい手の中には、バイオリンが握られていた。
「どうぞ僕に、一曲弾かせて頂けませんか?その女の子と貴方の為に....」
「なんとお礼を申せばよいのか、貴方のその深き心遣いに感謝いたします.... 」
嬉しい申し出にふわりと微笑みを溢せば、チョロ松くんの頬が少し赤く色づいた。
チョロ松くんに深くお辞儀をした後で、目的の人物のもとへと向かう。