第21章 ハロウィンの夜は危険がいっぱい?
あーーっ!
やっと着いたわ。
意気揚々とトド松くんを置いて出てきたものの、途中で道に迷って場所がわからなくなるという方向音痴あるある。
「こんなことになるなら、トド松くんと出ればよかった」
ガックリと肩を落としつつ、自分の低い声に違和感を覚える。
そっと喉元を触れば、喉仏が出ていて、自分が今男であることを実感する。
「慣れないよな、さすがにこれは」
女が男になるとか、慣れるとか慣れない以前にむしろ慣れちゃダメだ。
目線が高くなったおかげで、視界がとても広く見える。なんか、違和感ありすぎて怖いんだけど....
なんとなく頭を触ってみれば、柔らかい耳が手に当たる。
自分で優しく耳を撫でると、何故だかふにゃあっと力が抜けていく。さらに九本ある尻尾の一本を優しく撫でれば、これまたふにゃあっと力が抜けた。
どうやら感覚はちゃんとあるらしい。
「動物って触られてたらこんな感じなのかな?」
自分の耳を触りながら、気持ちのいいところを撫でる。ここかと思いながら、さっそく心にメモ、アルを撫でるときにここ撫でてあげようっと。
そんなことを思いながら、会場に1歩踏み入れようとあたりを見渡せば限りなく赤が広がっていた。
ハロウィンなのはわかるが、これではブラッディ過ぎる。
「どんだけ血糊をぶちまければ気がすむの?」
一人言を呟いて、会場に入ろうとした瞬間に、赤いドレスの女の人が目の前でこけそうになった。
「危ない!」
その言葉と同時に急いで女の人を支えた。
ぱっと横を見ると、おそ松が右手を差し出してその女の人を助けようとしている。
まぁもう私が助けたからあんたの出番とか、ないんですけどね。
ありがとうとお礼を言われ、顔を見てみればすっごい綺麗な女の人だったのでビックリした。
でもその人にも、キラリと耀く鋭い牙が見えたので、吸血鬼なんだとうっすら思った。
慣れとは本当に恐ろしいものである。