第20章 桜が舞えば想いは消える
「きっとね、その人間はヴァンパイアに出会えて幸せだったと思うって、だから自分を責めるのはもうやめてって、じゃないといつまでも人間は懺悔室を閉めることできないよって....」
どうしてそんなことを言うのかな?
僕のことってきっとわかってるよね?
むしろここまで話して、僕じゃないほうがおかしいよね?
遠い昔の友達の記憶と混ざる、鈴音ちゃんの言葉
あの日、僕はもう人間と深く関わらないって決めた。
どんなにあつしくんのことは好きだったとしても、人間を許せるわけじゃない。
今でも焼き付いて離れない人間への憎しみ、怒り
その狭間にある、親友との大切な思い出。
封印してきた過去を開けたら、後悔ばかりで....
あつしくんが言っていた、自分の罪を思い返すのは嫌なことだっていうことがよくわかる。
それなのに鈴音ちゃんと出会ってからぼやけていたそれを嫌でも思い出す。
だって
「ヴァンパイアはきっとその人のこと、とっても大切に思ってたんだね....」
ほら?
鈴音ちゃんはいつだってそう
僕の気づいて欲しくないことに気づく
その行動が少しあつしくんとかぶって、心を乱されるんだ。
「いや、腹ぶっ刺されたんだよ?恨んでる恨んでる」
そういって笑うと、たしかにその件は私がヴァンパイアの立場だったとしても許せないって笑う。
「....じゃあ、ずっと忘れてやらないね?」
にかっと笑って溢す言葉が、忘れちゃダメだよ、忘れなくていいよって言われてるみたいで
だから僕は君が嫌いなんだよ。
僕の気づいて欲しくないことに気づくから。
ふうっと心でため息をつけば、いきなり
「ねぇ?トド松くん、お願いがあるんだけど」
唐突に言われて、ダンスの件はやだよ?って言ったら違うって言われた。
「うん、実は....」
実はの後で、僕はお腹を抱えて笑った。
悲しいとかそんなこと吹き飛んじゃうくらい、突拍子でもないどうしようもないお願い。
「いいよ、面白いから手伝ってあげる」