第20章 桜が舞えば想いは消える
「こんなもんじゃない?」
僕の前に立つ鈴音ちゃんが、にこりと笑った。
「ありがとう、トド松くん」
僕にお礼を言った後で、鏡で自分の姿をみて笑っていた。
「さてと、そろそろ行かないとね?」
おそ松兄さんからもらった薬を飲んでいるせいで、かなり面白いことになってる。
パシャツと反射的にスマホで写メを撮ったら、無断撮影は禁止って笑われた。
「トド松くん、今度一緒にお菓子作ろう?」
これまた唐突にそう言われる。
「いいよー、今度ね」
「約束?」
その言葉に、少し胸がちくりといたむ。
「大丈夫、約束は守るためにあるから」
にこって笑うと、小指をからめられる。
ゆびきりって言った後に、扉へと向かっていく後ろ姿
漆黒の衣装が、まるで夜を引き連れているみたいでとっても綺麗だ。
「ちょっと待って?」
僕の一言に立ち止まる鈴音ちゃんに、ひとふり振りかける魔法
「香水?」
「そっ、僕のお気に入り」
「いい匂い、ありがとう」
嬉しそうに微笑む姿に、何故だか胸が鳴る。
いや、おかしいおかしい。
今の姿でそれはない。
高く一つに結われた髪をさらっと撫でて、鈴音ちゃんを見送る。
パタンと閉まるドア、僕の香水と鈴音ちゃんの匂いが混ざった残り香がふわりと香る。
....まぁ、どんな姿でも鈴音ちゃんは鈴音ちゃ.....
........いや、ないない、絶対にない
必死に首をふりながら否定する。
絶対、ぜっったい、好きになってあげないんだから....
そう、嫌い、鈴音ちゃんなんて
....鈴音ちゃんなんて....大嫌い....
ポケットから、チェーンのない金のロザリオを引っ張り出す。
僕にはまだ隠してることがある....
もしそれを言ったら....
また嫌われちゃうのかな....?
それは....嫌かな....
なんて..... ね?