第20章 桜が舞えば想いは消える
違う?違うって何が?
予想外の回答に、頭が上手く回らない。
「私なんです.... 」
静まり返った懺悔室で、流れる時間はあまりにも長い。
「私が....貴方を、退治してほしいって頼んだんです.... 」
震える声
予想外の答え
ねぇ?今何て言ったの?
「私、あつしくんが悪魔にとりつかれていると思って....」
....なに....それ?
「あつしくんは、トド松くんはそんなんじゃないって、私に何度も何度も言ってくれてたのに....私、私、彼の言葉を最後まで信じられなくて....」
これだから、人間ってやつは....
一気に頭に血が上る
「....黙れよ」
気づけば僕はその子の首を絞めていた。
ゆっくりと空中に浮かせ、さらに首を絞める。
「今、言ったことが本当なら。君があつしくんを殺したってことになるよね?」
自分でも驚くほど冷たい声が口から飛び出す。
思考はいたって冷静で、それでいて腸は煮えくり返っていた。
目に集まる力は憎しみの色に染まる。
「ねぇ?あつしくんのこと好きだったんだよね?なんで信じてあげなかったの?」
右手に力をこめれば、それと連動してその子の首が絞まる。
「あつしくんがどうやって死んだか知ってる?異端者って言われて、痛め付けられて.... 」
何度も何度もあつしくんが剣に貫かれた光景が目に焼き付いて離れない。
ほらね?やっぱり神様なんていないんだよ?
だって神様がいたらこんな悲しい物語なんて紡ぐはずないじゃない?
彼女を責める資格がないことも、彼女を殺す権利がないこともわかってる。
僕が出会わなければ、こんなことにならなかったなんてこともわかってる。
全部....
わかってるんだ....
そんな僕の葛藤に入り込むように、細く弱く紡がれる言葉
「....わ....た.... し.... あつ.... しく.... んを.... 愛し.... て.... いま.... した.... 」
その言葉に、手の力を緩める。
そうっとその子を僕の目線に合うように下ろす。